火星探査機スピリットがオリオン座を撮影

【2005年11月2日 JPL PhotoJournal

NASAの火星探査車スピリットが、普段火星の大地を撮影しているカメラを空に向け、夜空の中にオリオン座の姿をとらえた。

(スピリットによるオリオン座の写真) (コンピュータ・シミュレーションによるオリオン座の画像)

(上)スピリットによるオリオン座の写真、(下)コンピュータ・シミュレーションによるオリオン座の画像(露出は60秒)。ともにクリックで、公開された計4枚の画像を表示(提供:NASA/JPL-Caltech/Cornell/Texas A&M/Space Science Institute )

スピリットは、余った太陽エネルギーを夜間に星空を観測することで活用している。これには実用的な目的があり、カメラの感度をチェックし、夜間に雲やもやが出てないかを探っているのだ。

右の画像のうち、上が実際にスピリットがパノラマ・カメラで撮影したもの(露出は60秒)、下がコンピュータシミュレーションによるオリオン座の画像だ。リリース元では、これら2枚以外に、露出10秒、30秒の画像も公開されている。

スピリットは現在火星の南半球にいる。そのため、オリオン座が地球の北半球から見たものとは逆さまに写っている。星が線を引いているのは、火星の自転により地球と全く同じように星の日周運動によるもので、いわば天体写真でいうところの固定撮影をスピリットが行っためだ。火星の自転周期は地球とほぼ同じ24時間37分なので、大気の透明度以外は、地球で天体写真撮影を行ったのと同じ結果になる。

ところで、オリオン座といえばオリオン大星雲(M42)が有名だ。オリオン座の「三つ星」の右斜め上に写っている「小三つ星」の真ん中がそれで、恒星とは違う少しぼやけた像として確認できる。画面左上の明るい星はリゲルだ。何も知らずにこの画像を見たら、とても火星で撮影したものとは想像できないだろう。

写っている一番暗い星は6等級。なお、ところどころ日周運動とは関係ない方向に走る光の筋や点が見えるが、これは流星ではなくてカメラの検出器に飛び込んだ宇宙線によって生じたノイズだ。将来、火星で天体写真撮影をするような時代になると、大気が地球より薄いせいで、宇宙線カブリが撮影の障害になるかもしれない。


スピリット : NASAが「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」と名付けた火星探査で2つの場所に着陸させた2機のローバーの一つ。2004年1月3日、「グゼフ・クレーター」への軟着陸に成功。古代の火星における水と気候に関する調査を行い、生命の痕跡を探す。(「スペースガイド宇宙年鑑2005」より一部抜粋)