日本人2人が発見に関わった、10等のSWAN彗星が出現

【2005年8月29日 JSGA Web News No.12 / 国立天文台 アストロ・トピックス(134)

(JSGA Web News)

8月24日夕方の北西の空の低空に10等級の SWAN彗星(C/2005 P3)が出現した。太陽観測探査機SOHOのホームページ中にで公開されている太陽風異方性観測装置(Solar Wind Anisotropies;SWAN)による画像中にこの彗星を発見したのは、福島県須賀川市の佐藤裕久氏、栃木県宇都宮市の鈴木雅之氏の両氏だ。

(8月26日夕方、確認観測で地上から捉えられたSWAN彗星)

8月26日夕方、確認観測で地上から捉えられたSWAN彗星。(口径25cm反射望遠鏡による撮像で、CCD全光度は11等)クリックで拡大(提供:アストロアーツ 門田健一)

須賀川市の佐藤裕久氏、宇都宮市の鈴木雅之氏がSWANの8月の画像中に10等級の彗星らしき像を見つけ、国際天文学連合(IAU)へ連絡したのは8月24日。この像については、佐藤裕久氏から報告された8月9日から21日までの位置計5個から計算された軌道によって、まちがいなく彗星であることが指摘された。同時期に、国外からも、SWANイメージ上のこの像に関する報告はあったが、日本人が関わった重要な発見といえる。

この彗星は、8月25日12時半(JST)になって、クラウドクラフトのヘール(A. Hale,Cloudcroft)によって、10.5等で眼視確認された。日本国内でも、この夜に確認作業の態勢がとられたのだが、接近していた台風11号の影響で実現しなかった。しかし、台風通過後の26日夜には、埼玉県上尾市の門田健一氏がこの彗星の確認に成功した。同氏による CCD全光度は11等で、彗星は中央集光をもつ拡散状で2分角のコマが見られたが、尾はなかったという。また、熊本の小林寿朗氏によっても、口径10cmの双眼鏡で、この彗星が捉えられ、同氏によってコマ視直径1分角、眼視全光度を 9.0等と観測された。海外でも、マリョルカ島でサンチェスらが25日5時(JST)、ツーソンのマックガハが26日12時(JST)頃の位置を報告している。

彗星の軌道は、日本スペースガード協会の小惑星ニュースに公開されているが、13個の観測から決定されたたもので、予報位置は誤差が大きいとされている。同彗星の軌道要素と位置予報は、東亜天文学会計算課 最新情報の「[2005.08.29 彗星C/2005 P3の軌道と予報」で公開されている。

SWAN彗星(C/2005 P3)は、現在おおぐま座にあり、日没後の北西の空に見えている。近日点通過は8月9日で、太陽からだんだん遠ざかっているが、日々北へと移動している。このため、薄明終了時の地平高度は9月になっても13度弱と観測条件は良くならない。9月中旬以降は明け方の北東の空の方が見やすくなる。なお、9月23〜25日にはM97・M108のすぐ近くを通過する。このころには12等級まで暗くなっているが、写真では良い被写体になるだろう。


SWAN彗星(C/2005 P3)の位置や光度変化:この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.7」で表示して、位置や光度変化を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。


(国立天文台 アストロ・トピックス)

8月31日更新

太陽観測衛星(SOHO)で観測されている太陽の画像はSOHOのウェッブページ上に公開されています。この画像からはこれまでにも多くの彗星が発見されてきました。8月24日、SOHOの観測機器のうち太陽風異方性検出装置(Solar Wind Anisotropies; SWAN)による8月の画像の中に、福島県須賀川市の佐藤裕久(さとうひろひさ)さんと栃木県宇都宮市の鈴木雅之(すずきまさゆき)さんが新彗星 C/2005 P3(SWAN)を発見しました。海外でも何人かがSOHOのウェッブページ上の画像から、この彗星を発見しています。

この彗星は、アメリカ・ニューメキシコ州クラウドクラフトのヘール(A. Hale)さんによって、25日に10.5等の明るさで眼視観測で確認されました。また、台風11号の通過後の26日夜、埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)さんもこの彗星を確認しました。門田さんのCCDによる観測では11等級の明るさです。

なお、鈴木さんは2002年7月のSOHO/SWANの画像からも新彗星を発見されています(国立天文台・天文ニュース(572))。

※SOHO: Solar and Heliospheric Observatory; 太陽観測衛星、ESA(European Space Agency; ヨーロッパ宇宙機関)とNASA(National Aeronautics and Space Administration; アメリカ航空宇宙局)の共同により1995年に打ち上げられたもの

SWAN:Solar Wind Anisotropies; 太陽風異方性検出装置、太陽風に関係して生ずる水素原子のライマン・アルファ線を観測する装置

<参照>

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