ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、宇宙に広がる赤いはしご(HD 44179星雲)

【2004年5月14日 HubbleSite NewsCenter

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、宇宙に広がる赤いはしごのような形を見せる、HD 44179という一風変わった星雲の姿を捉えた。

(ハッブルの捉えたHD 44179の画像)

HD 44179(提供:NASA, ESA、謝辞:Hans Van Winckel(Catholic University of Leuven, Belgium); and Martin Cohen(University of California, Berkeley))

HD 44179はいっかくじゅう座にあり、地球から2300光年離れている。星雲の特徴的な形と赤い色は、地上に設置された望遠鏡からも捉えられており、Red Rectangle(赤い長方形)と呼ばれている。ハッブル宇宙望遠鏡によって明らかにされたのは、この星雲の形が正確な長方形ではなく、アルファべットのXの形をした構造になっている点だ。これは、中心にある星からちりとガスが放出されているために作られると考えられている。星からのちりとガスは正反対の2方向から放射されているので、まるで二つのアイクスリームのコーンを思わせるのような形をつくっているのだ。また、はしごの段のような直線状の構造は他の星雲にはない特徴で、数百年おきに起こっている星の質量放出で作られたものだと考えられている。

中心にある星は、太陽のような普通の恒星として生まれたが、その命は終わりをむかえつつある。観測されているのは、星の外層部分が放出されて星雲となっている様子だ。この外層の放出は1万4000年前から続いている。今後数千年のうちには、この星は小さく高温となり、周りの星雲に紫外線を放射し始める。そうすると、星雲中のガスが蛍光を発するようになり、いわゆる惑星状星雲へと姿を変えるのだ。今はまだ中心の星は低温のため、周囲のガスやちりは星の光を反射して輝いて見えているだけである。このような赤い色を見せているのが一体どのような分子によるものなのかははっきりとはしていないが、おそらく炭化水素ではないかと考えられている。

また、星雲の中心には連星が発見されている。これらはひじょうに近い距離にあり、10か月半の周期でお互いのまわりを周っていることがわかった。これらの連星の相互作用によって厚いちりの円盤が放出され、その円盤が星から吹き出すちりやガスを絞り込んだ結果、その円盤と垂直な方向にコーン型の構造ができたと考えられている。

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