ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた宇宙に輝く蝶の羽、惑星状星雲NGC 6302

【2004年5月1日 ESA Focus On

ハッブル宇宙望遠鏡によって、約4000光年離れたさそり座にあるバグ星雲(NGC 6302)という惑星状星雲の美しい姿が捉えられた。

(NGC 6302の画像)

バグ星雲NGC 6302(提供:ESA/NASA and Romano Corradi (ING))

バグ星雲は、眩しく輝く惑星状星雲の一つとして知られている。今回ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたのは宇宙に輝く巨大な蝶の羽といったところで、圧縮されたガスの壁や星雲をドーナツ形に取り巻くちりなどが写し出されている。中心には、強い紫外線を放つ摂氏25万度の星が存在しているが、これは現在知られている星の中でもっとも高温な星の部類に入るものだ。しかし、星そのものの姿は、ちりに埋もれて見ることができない。

バグ星雲の構成物質も興味深い。鉱物や結晶構造をした氷(小さなちりの粒に氷結したひょう)の混合物は、他の天体ではほとんど見られないものだ。また、以前の観測で見つかっている炭化水素や炭酸塩なども注目されている。太陽系では、炭酸塩は液体の水に溶けた二酸化炭素が堆積して作られるもので、過去に水が存在していたことを示す指標だが、惑星状星雲には液体の水は存在しない。炭酸塩ができる別の過程があるということだろう。

さらに、約1万年前に放出された星雲がどのようにして作られたのか、中心にある高温星からの紫外線放射による蒸発からどの程度存在し続けられるかについてもわかっておらず、謎の多い惑星状星雲だ。

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