ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、ゴッホ作「星月夜」の宇宙版

【2004年3月8日 HubbleSite NewsCenter

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、まるでゴッホの絵画「星月夜」を真似たかのような、数兆キロメートルの範囲に渦巻く美しいちりのようすを捉えた。

(V838 Monの写真)

V838 Mon。2004年2月8日撮影(提供:NASA、P. Challis, R. Kirshner (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics) and B. Sugerman (STScI))

(ゴッホ作「星月夜」)

ゴッホ作「星月夜」。1889年作(ニューヨーク近代美術館所蔵)

この画像は、特異変光星V838 Monを取り巻く光のハローを、ハッブル宇宙望遠鏡が今年2月8日に捉えたものだ。V838 Monは、いっかくじゅう座の方向にあり、地球から2万光年離れている。光のエコーと呼ばれる星を取り巻く雲の輝きは、とてもめずらしい構造を見せているが、このエコーは星がアウトバーストを起こして突然輝き初めた2002年1月ごろから見られているものだ。

ハッブル宇宙望遠鏡はこの光のエコーを追い続けてきたが、今回初めて、ちりの雲の中のめずらしい渦巻き構造を捉えた。この渦巻きは、星の周りで広がり続けているちりとガスの中で起きている乱気流によって引き起こされていると考えられている。ちりとガスは、2002年に起きたものと同様の現象によって数万年前に起きたと思われる爆発で放出されたと考えられている。そのガスの存在は、2年前の星の爆発によって光り輝き出すまでは、見ることのできないものだった。

2002年1月のアウトバーストにより、V838 Monは一時は太陽の60万倍という明るさとなり、天の川銀河で一番明るい部類の星となった。その後、2002年の4月までにはその姿は再び暗くなってしまった。明るさなどの点で新星との類似点はあるが、特徴的だったのは、その極端な赤さだ。このような赤さは他の新星では見られていないものである。

専門家は、アウトバーストの光がより外側まで伝わっていくにつれて、ちりと光が作り出す姿も変化を続けるだろうと話している。2010年ころまでは、引き続き可視光で観測できるだろうということだ。