108億光年かなたに見つかった、長さ3億光年の巨大な銀河連鎖

【2004年1月23日 Goddard Space Flight Center

3億光年にもわたってのびる巨大な銀河連鎖が、距離108億光年(赤方偏移パラメータz=2.38)という遠方の宇宙で発見された。初期宇宙にこれほど大規模な銀河連鎖構造が存在していることは、現在の宇宙進化論では説明できず、コンピュータシミュレーションからも再現できないため、その存在は大きな謎に包まれている。

(巨大な銀河連鎖構造の想像図)

巨大な銀河連鎖構造の想像図(提供:NASA)

この巨大な銀河連鎖は南天のつる座の方向にあり、長さ3億光年、幅5千万光年と見積もられている。これは、1989年に発見された、銀河が集中的に壁面にびっしりと存在しているような領域「グレートウォ−ル」に匹敵するほどの大きさだ。すでに銀河37個とクエーサーが1個が確認されているが、実際には数千もの銀河が存在すると推測されている。

銀河は、ダークマター(暗黒物質)と呼ばれる正体不明の物質が集まってできたと考えられている。近年、近くの宇宙については、銀河の分布とダークマターの分布はだいたい一致していることがわかってきた。遠方の、初期の宇宙でも同じようなことが起こっていたと考えると、今回発見された銀河連鎖の部分にダークマターが集中して存在していることになるが、初期の宇宙ではダークマターは比較的均一に分布していたはずだ。つまり、ダークマターは銀河連鎖の部分だけに存在していたわけではないと考えられる。

では、ある部分のダークマターでは銀河が作られ、そのほかの部分のダークマターからは銀河ができなかったということなのだろうか?そうだとしても、なぜそのような違いが生じたのかについてはやはり不明だ。宇宙年齢が現在の20%程度だったころに、どうやってこのような巨大な銀河連鎖が形成されたのか、現在の理論ではまったく説明できない。

この発見によって、現在支持されている宇宙進化モデルの見直しが必要になるかもしれない。今後、この巨大構造の謎に迫るべく、今回発見された領域の10倍のスケールで周辺の地図作りが始められるそうだ。

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