土星探査機カッシーニの受信機に問題

【2000年10月12日 FLORIDA TODAY Space Online (2000.10.11)

NASA/ヨーロッパ宇宙機関(ESA)/イタリア宇宙機関(ISA)の共同による土星探査機「カッシーニ(Cassini)」の受信機の問題から、カッシーニから投下され土星最大の衛星「タイタン」へ降下する小型探査機「ホイヘンス(Huygens)」(ESAによる)のミッションに支障が生じる可能性があることが判明した。

ホイヘンスはタイタンに降下しながら、雲や大気、地表についてのデータを母機であるカッシーニに送信しつづける。ところが、9月にESAが行なったテストの結果、カッシーニの受信機がこのホイヘンスからの送信を全て受信することができず、一部のデータが欠損してしまうかもしれないというおそれが発覚した。これは、打ち上げ前のテストでは発見できなかったが、ESAでは現在なぜ打ち上げ前に発見できなかったかについて調査中。

問題の一部は、ドップラー効果の影響による。ドップラー効果は、近づく救急車のサイレンが高く、遠ざかる救急車の音が低く聞こえる現象。カッシーニ/ホイヘンスにおいては、カッシーニとホイヘンスが離れる速度が増すにしたがってカッシーニが受信する信号の周波数が低くなっていくという問題が起こる。

ホイヘンスの動作可能時間はおよそ5時間と見込まれているため、データの一部の欠損は重大な問題となる。NASAとESAでは現在対策を検討中だが、対策の候補としては降下中のホイヘンスを追跡する能力を高めることや、軌道を変更してカッシーニとホイヘンスが離れる速度の差を小さくすることなどが検討されている。

カッシーニは1997年10月15日にタイタン-4Bロケットで打ち上げられ、金星と地球でスイングバイ(天体の重力を利用した加速)を行なった後、現在は木星に接近しつつある。12月末に木星スイングバイ、土星着は2004年7月、ホイヘンスの降下は2004年11月の予定。今回発覚したホイヘンスのミッションに関わる問題の他は順調である。

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