メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第38回 ZEROから宇宙が誕生した

星ナビ2008年3月号に掲載)

前回、メガスターの製品化という話をしましたが、今回はその先鋒であるメガスターZEROのテスト投影の話です。

大出力LEDで広がる可能性

はじめに開発したメガスターZEROの最大投影ドーム径は、直径7mのはずだった。光源であるLEDの光量の制約のためである。もともとのコンセプトがポータブル機だから、エアドームを使った移動式プラネタリウムや、学校用などの小規模ドーム用として、それでも十分と考えていたのである。

しかしその後、続々と大出力のLEDが開発されたことで、情況が大きく変わった。光量が当初設計の4倍以上に向上し、直径10mでも十分投影可能な性能を出せるようになったのである(投影可能ドーム径は、光量の平方根に比例する)。つまり中型館といわれる規模のドームがそのレンジに納まることになる。しかし、計算上の値だけで納得できないのも確かである。

命を吹き込まれたメガスターZERO

そんなわけで実際にドームで投影してみることにした。先日ドーム利用協定を結んだばかりの埼玉県坂戸児童センターの10mドームに、新型ZEROの試作機を持ち込んでテスト投影を行ったのである。立ち会ったのはごく数名。ダンボール箱から取り出したひと抱えのメガスターZEROを片手でドーム中心に据える。小さい。直径26cmの球体は、広いドームの中で余計に頼りなく見える。こんなもので本当に星が映るのか?

そんな不安は、電源を入れた直後に吹き飛んだ。現れた星空は想像以上のものだったからだ。降るような星空が燦然と輝き、恒星の明るさは十分すぎるほど。もしかしたらメガスター?より明るいのではないだろうか。これなら10mはおろか、13mドームくらいでも対応できるのではと思われるほどであった。

星空の美しさと並んで印象的だったのは、無音であることだ。ほとんどの光学式プラネタリウムでは、強力な光源を冷やすために冷却ファンが取り付けられているが、ZEROは騒音源となるファンを備えていない。コンダクションクーリング(伝導冷却)という冷却方式を採用しているのだ。だから日周運動などの運動を止めてしまうと、一切の音がなくなり、完全な静寂を作り出す。ある意味ピンホール式投影機のような感覚でもある。投影機の存在感が消えて、大自然の中で本物の星空を見上げている感覚に近くなったのだ。些細なようでこれは重要なことだと感じた。

テストはわずか30分ほど。しかし、ポータブルプラネタリウムから中型常設館までも照準に定められると、大きな手ごたえを感じた時間だった。

さて、坂戸児童センターのドームでは、デジタル映像やメガスターを連動する技術開発試験、そしてこれらの成果を活かした公開などを行っていく。児童センターにほど近い坂戸市内に、私たちが駐在できる部屋も借り、本腰を入れて研究開発を行う準備が整った。ZEROのドームでのテスト投影は、その最初のステップとなった。

メガスターゼロ

今回ドームでテストを行ったメガスターZERO試作機。直径26cmという小型化を実現しているが、ドームの中で頼りなく見えてしまう。しかし、その星像は十二分に満足できるものだった。