メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第22回 メガスター現象を世界に伝える(1)

星ナビ2006年10月号に掲載)

世界中のプラネタリウム関係者が集うIPSで初めてメガスターを発表してから10年。最近は国際的な発表の場から遠ざかっていましたが、オーストラリアのメルボルンで開かれたIPS2006に参加して4年ぶりの発表を行いました。

遠ざかっていた国際舞台

IPS(国際プラネタリウム協会)の大会。それは僕の初めての国際デビューの場となり、またメガスターを初めて世に問うた場所。初めてIPSに参加したのは、1996年に開催されたIPS大阪大会。板橋区立科学館にお勤めの小野夏子さんの誘いで、とりあえず運用が終了したばかりのアストロライナーを発表した。それが思わぬ反響を呼び、次のメガスターにもつながった。

1998年、IPSロンドン大会で初めてメガスターを発表。現地に実機を持ち込み、未曾有の100万個の星による投影は、僕にとって、そしてきっとIPSにとっても記憶に残る発表だったと思う。それからもう8年になる。

IPSは2年おきに開催されていて、その後、2000年にはモントリオール(カナダ)大会が、2002年にはウィチタ(アメリカ)大会が開催され、僕は参加を続けてきた。しかしモントリオール大会ではポスター発表にとどまり、実機持ち込みで会場を驚かせたロンドン大会より随分控えめの参加だった。ウィチタでは発表そのものをしなくなった。そして2004年のヴァレンシア(スペイン)大会に至っては、日本科学未来館の常設オープンに時期が重なったこともあり、参加自体を見合わせた。メガスターが国内で活動の場を急激に拡大してゆくのに反比例するかのように、国際舞台との距離は遠のく一方、僕が知人を通じてかろうじて耳にする海外のプラネタリウム事情は、デジタル化の急速な流れだった。

日本はプラネタリウムの暗黒大陸?

そんな僕が、今年7月に開催されたメルボルン(オーストラリア)大会に参加、発表することを決めた。2年ぶりの参加で、発表は4年ぶりである。発表のテーマは、日本におけるメガスターの活動の展開。そして新型プラネタリウム「メガスターゼロ」であった。日本は世界第2のプラネタリウム大国であるが、海外からはその状況が見えづらく、言葉の壁もあろうが、まるで暗黒大陸のようだと言われているのだそうだ。米国を中心にデジタル化が進展し、光学式プラネタリウムをまったく使わない施設が急激に増えている。そうした事情の中で、光学式の有力メーカーが併存する日本では光学式至上の意識が根強い。メガスターも言うに及ばずである。

そして、海外では時代遅れであるはずの光学式であるメガスターが、日本では高い集客性を持ち、これが全国ネットテレビのドラマにされ、テレビCMにまで起用され、日本国内では最も有名なプラネタリウムとされ言われている。こういう状況は海外におそらくほとんど知られていないが、海外に類を見ない極めて特異で貴重な現象のはずだ。

暗黒大陸、日本で起きている奇妙なメガスター現象を世界に伝えること、その反応をみること、そして海外の最先端プラネタリウム事情を見てくることが、今回の参加の目的だった。ではそれは一体どのような結果だっただろうか? 次号で詳しくお話ししたい。

メルボルンプラネタリウム

7月23からの6日間、IPS2006の会場となったオーストラリアのメルボルンプラネタリウム。