かつての太陽の姿? 複数の惑星を示す円盤のすきま

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【2012年11月13日 すばる望遠鏡

日米の大学研究者を中心とする国際チームが、太陽程度の重さの若い恒星を取り囲む円盤に巨大なすきまを発見した。複数の惑星が存在する兆候である可能性があり、太陽が生まれたばかりのころのような姿を見いだすことができるかもしれない。


PDS 70 を取り囲む原始惑星系円盤

PDS 70 を取り囲む原始惑星系円盤の近赤外線観測画像。巨大なすきまが初めてとらえられた。中心部分の黒い円形のマスクは、恒星の光の影響を取り除くためのもの。クリックで拡大(提供:国立天文台。以下同)

PDS 70の円盤構造の想像図

PDS 70の円盤構造の想像図。円盤の広いすきまに複数の惑星がひそんでいると考えられる。クリックで拡大

国立天文台、米プリンストン大学、すばる望遠鏡、神奈川大学、米ミシガン大学、工学院大学、米オクラホマ大学などの研究者を中心とする国際研究チームが、ケンタウルス座の方向約460光年先にある「PDS 70星」の周囲にある原始惑星系円盤の詳しい観測を行った。

原始惑星系円盤とは、生まれたばかりの恒星を取り巻くガスと塵の円盤で、その中から惑星が生まれる。地球や木星なども、生まれたての太陽の周囲に存在した円盤から誕生したと考えられている。

こうした円盤の物質は赤外線観測でとらえることができるが、その大きさは恒星の質量によるため、軽い星の円盤はなかなか詳しく見ることができなかった。だが、すばる望遠鏡の惑星・円盤探査カメラ「HiCIAO」を用いた観測により、PDS 70のような軽い星の円盤の詳細な研究が可能になった。

PDS 70は太陽の0.9倍ほどの質量しかなく、生まれてから約1000万年というとても若い星だ。観測の結果、その周囲の円盤に、半径約70AUにまでひろがるすきまが初めて発見された(画像1枚目)。AU(天文単位)とは太陽〜地球の平均距離をベースにした単位。太陽から最も外側の惑星である海王星までが約30AUといえば、そのすきまの巨大さがわかるだろう。

また、恒星から1AUほどのところには内側の円盤が存在することもわかり、円盤の全貌としては、画像2枚目の想像図のような二重の構造があると考えられる。

こうした構造では、円盤の中で作られた惑星の重力の影響ですきまが出来たと考えるのが最も自然だ。しかもこれほど巨大なすきまは、複数の惑星によって作り出された可能性があるという。

すきまといっても物質がわずかに残っており、その光(赤外線)に埋もれて惑星を見ることはできないが、今後の直接観測が期待される。

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