火星の水はほとんど地下にあった?

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【2011年11月10日 NASASpaceflight Now

火星上で見られる、かつて水があった証拠と考えられる粘土鉱物は、そのほとんどが地下で作られたことがわかった。火星での生命の存在や火星大気の変化の議論に影響を与えそうな結果だ。11月9日に打ち上げられたロシアと中国の火星探査機の動向についても紹介する。


探査機によるクレーターと急斜面の画像とその鉱物分布

探査機が撮影したクレーター(左列)と急斜面(右列)の画像。上段は赤外線による画像で、下段は鉱物分布を表している。青い部分は鉄やマグネシウムの粘土鉱物を示し、赤い部分はアルミニウムを含む粘土鉱物を示している。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/JHUAPL)

探査機が撮影した火星の地形の画像を見ると、デルタ地帯や川の跡のような、かつて水が流れたように見える場所が多く見つかっている。また着陸機「フェニックス」は火星の土壌に氷が存在しているのを確認し、かつて水があったことは確実視されている。しかし、いつ頃、どこにどの程度の水が存在していたのかという点に関しては未だに議論が続いている。

今回、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」やNASAの「マーズ・リコナサンス・オービター」による350ヶ所以上の火星表面の鉱物分布データから、粘土鉱物の種類の特定を行うことで、火星表面に水が存在していたかどうかを調べた。その結果は、火星表面に水が豊富に存在していたのは35億年以上前の「ノアキアン時代」末期の、ごく散発的な期間のみということを示すものだった。

粘土鉱物とは粘土を構成する鉱物のことで、その存在は火星がかつて今よりも温暖で水のある環境だったことを示している。また、粘土鉱物の種類の違いは火星の環境の違いを示していると考えられ、その調査は火星がどのような環境にあったのかを調べる上で非常に有効である。

調査の結果、火星の表面はマグネシウムや鉄でできた粘土鉱物が多く存在していることがわかった。これは、水が少ないためにもともとの火山岩からあまり変質していないことを表している。また別の手がかりとして、プレーナイト(ぶどう石)の存在が挙げられる。この鉱物は200℃以上の環境下でしか作られず、これほど高温な熱水環境は地表面というよりは、地下で作られたと考えるのが自然だ。

これらの結果を踏まえると、いくつかの例外を除き、ほとんどの水は地表面ではなく地下にあったと考えを変える必要がある。また、火星に見える流水地形は、地下の水が地表面に噴出したごく短い期間に作られたものかもしれない。

その数少ない例外のひとつが、今月25日に打ち上げ予定の火星探査車「キュリオシティ」が探査する予定地「ゲールクレーター」だ。探査の結果が期待されている。


ロシアと中国の火星探査機、軌道投入時にトラブル発生

ロシアの火星探査機「フォボス・グルント」と中国初の火星探査機「蛍火1号」を搭載したゼニト2SBロケットが、日本時間の11月9日午前5時16分、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。

地球軌道への投入は成功したがその後の火星遷移軌道への投入に失敗したもようで、現在はパーキング軌道と呼ばれる地球低軌道上を周回しているものと考えられている。トラブルの原因はよくわかっておらず、火星遷移軌道投入に向け復旧作業を行っている。もしこのまま遷移軌道投入ができなければ、徐々に高度を下げ、地球へと落下する見込みである。

フォボス・グルントは火星の衛星フォボスのサンプルリターンを目的とした衛星で、蛍火1号は中国初の火星探査機で磁力計やプラズマプローブなどを搭載し、火星環境の探査を目的としている。

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