「あかつき」中間報告 太陽熱に耐え旅を続ける

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【2011年4月14日 JAXA

昨年末の金星周回軌道投入に失敗後、数年後の再挑戦を目指して航行中の探査機「あかつき」について中間報告が行われた。現在の運用状況は正常で、今後機体を太陽熱から守るための対策がカギとなりそうだ。4月17日には最初の近日点通過という山場を迎える。


(「あかつき」の軌道図)

「あかつき」の現在の軌道。金星の公転軌道よりやや内側に入りこみ、4月17日に近日点を通過する。クリックで拡大(提供:JAXA)

「あかつき」の赤外線カメラで撮影した金星

3月9日、IR2カメラを用いて波長2.02μmで撮影した金星。「あかつき」にとって、数年後の金星再接近までしばしの見納めとなる(提供:JAXA)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月13日、運用中の金星探査機「あかつき」の現状について宇宙開発委員会で報告した。

昨年5月21日に打ち上げられた「あかつき」は、12月7日に金星周回軌道に入ろうとしたが軌道制御エンジンの噴射が正常に行われず失敗。金星とほぼ同一の公転軌道を、金星に先んじながら回る軌道に乗った(画像1枚目)。想定より太陽に近い軌道となったため、機体を熱から保護することが今後の最大の課題となる。

現在は近日点(軌道中、太陽からの距離が最小となる位置)を通過する4月17日に向け、地球との通信に最適な向きを犠牲にしても機体の外部機器が最大許容温度を超えないことを優先した姿勢をとりながら運用している。数年後に軌道投入に再挑戦する場合、それまでに近日点を11回通過することになるため、今回のデータが今後の計画の検討材料となるだろう。熱にさらされる期間を短縮するためにもっと早い段階で金星投入を試みるという道も考えられるが、その場合は燃料を消費して軌道修正を行う必要があり、そういったプラスマイナスの兼ね合いも重要となってくる。

現時点では搭載機器等は正常に動作しているという。5つのカメラのうち、軌道投入マヌーバ後の動作確認が残っていた赤外線カメラ1台について今年3月に健全性が確認され、撮影された金星の写真が公開されている(画像2枚目)。それ以前に動作確認済だった4つのカメラについても、再度のチェックと科学データ取得のために撮影が行われた。

金星周回軌道投入に再挑戦するにあたって重要な軌道制御エンジン部の検証試験も地上で続けられている。失敗の原因と目される逆止弁の検証や、逆止弁の不具合によって異常燃焼が起こったと思われるエンジンの燃焼再現試験が行われているが、予測より多くの検証試験が必要となり試験用のサンプルも追加製造されるため、当初の見込み(今夏)より若干の遅れが生じているという。

並行して、これまでに得られた試験結果に基づいて、金星周回軌道投入に向けた複数の運用案を検討中とのことだ。

プロジェクトマネージャの中村正人教授は4月9日に都内で行われた講演会で、「あかつき」に言葉をかけるとしたら「めげるなよ、と言いたい」と語った。金星への帰還を目指し、プロジェクト全体が一丸となって「めげない」運用が続く。