「あかり」が赤色巨星の塵の詳細観測に成功

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【2011年3月25日 ISAS

日本の赤外線天文衛星「あかり」が、赤色巨星が塵を放出する過程を詳細に観測することに成功した。宇宙空間にどのように元素が放出されているかを知る重要な手がかりとなる。


(「あかり」の遠赤外線サーベイヤーによるダストシェルの様子)

「あかり」の遠赤外線サーベイヤーによるうみへび座U星のダストシェルの様子。クリックで拡大(提供:ISAS/JAXA)

(「あかり」の近・中間赤外線カメラによる暖かいダストシェルの様子)

「あかり」の近・中間赤外線カメラによるポンプ座U星の暖かいダストシェルの様子。中央の黒い丸は中心星に近い部分の明るい光を隠している。クリックで拡大(提供:ISAS/JAXA)

国立天文台、東京大学などの研究者からなる研究グループは、JAXAが2006年に打ち上げた赤外線天文衛星「あかり」を用いて「うみへび座U星」と「ポンプ座U星」と呼ばれる赤色巨星の観測を行った。

赤色巨星は太陽のような星が年老いた時に徐々に膨張してできる巨星であり、ガスや塵を放出して惑星状星雲が形成される。このガスや塵を放出する質量放出は恒星進化の最後の段階だと言われている。しかし、質量放出の過程がどのようになっているのかはよくわかっていなかった。

「あかり」は広い波長領域と高い空間分解能、高い検出能力を生かして、赤色巨星が質量を放出しているところを詳細に観測した。

うみへび座U星の観測から、放出された塵はきれいな球状に広がり、非常に薄い球殻を成していることがわかった。これは質量放出が等方的に短期間に集中して行われたことを示しており、わずか1000年ほどの間に地球約30個分の質量の塵とその100倍ほどのガスが放出されたと考えられている。この質量放出の原因は熱核融合反応の暴走の可能性が高いと考えられる。また、塵の広がり(ダストシェル)が中心星に対して偏っていることから、質量放出の初期段階から物質が周囲の星間物質に吹き流されていることもわかった。

ポンプ座U星では、ダストシェルの観測としては世界で初めて中間赤外線で画像を取得することに成功した。ここでも丸いダストシェルが確認できたが、遠赤外線の観測結果とあわせて解析したところ、このダストシェルはおよそ50度ほど温度の異なる2層に分かれることがわかった。ガスに富んでいる層とダストに富んでいる層で層構造を成し、そこに含まれる固体粒子のサイズも異なっていると考えられる。

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