NASA、系外惑星を直接撮像できる観測機器を発表

【2007年4月23日 JPL News Releases

近い将来、宇宙望遠鏡が地球のような小さな系外惑星を直接とらえる日がおとずれるかもしれない。NASAのジェット推進研究所(JPL)で開発されたコロナグラフを使ったシミュレーションでは、明るさが恒星の100億分の1という、ひじょうに暗い惑星が検出できることが証明された。


(実験で得られたシミュレーション画像)

系外惑星3つをとらえたシミュレーション画像。背景の明るさとはっきり区別できる3つの惑星のうち、明るさは1つが木星と同程度、1つは木星の半分、1つは地球と同じくらいの明るさ。クリックで拡大

「地球に似た惑星は存在するのか?」この重要な疑問の答えを得るため、多くの研究者が日々研究と観測を続けている。現在まにで発見された太陽系外惑星は200個以上。そのほとんどの質量は、地球の5倍から4000倍。いずれも生命の存在に適さない異常な高温か低温、または巨大なガス惑星だ。

JPLの研究員John Trauger氏らは、地球のように小さく暗い系外惑星の直接観測を可能にするコロナグラフを開発した。コロナグラフとは、もともとは太陽からの明るい光を遮る円盤を搭載した、コロナを観測するための装置だ。太陽に限らず、明るい星の光を隠し、周辺の暗い天体を観測するために使われる。

開発されたコロナグラフは、大気の影響を受けない宇宙望遠鏡に搭載することを想定しており、ひじょうにシンプルな構造だ。恒星に近い領域の光を遮る2対の特殊なマスク(覆い)と鏡(大きめの硬貨サイズ)からなる。

望遠鏡の主鏡の縁にあたった星の光は画像の中心で天体を取り巻く光の輪や爪跡のような模様をつくり(回折現象という)、あらゆる惑星の姿が視界から消されてしまう。この問題は、コロナグラフの2つのマスクが対処する。バーコードに似た1つ目のマスクは、恒星からの光をほとんど遮る。そして2つ目のマスクは、回折による模様を消し去ることができる。2つのマスクの組み合わせによって、いかなる惑星からの光も検出可能にするじゅうぶんな暗さが実現できるというのだ。

また、望遠鏡の主鏡にわずかな凸凹があると光は散乱する。すると、中心にある恒星の像の横にコピーが現れ、惑星が隠されてしまう可能性もある。この問題に対しては、変形する特殊な鏡が用意され、望遠鏡や周辺機器の微妙な影響が補正される。

恒星と惑星の代わりにレーザーの光を使用した実験では、明るさが恒星の100億分の1ほどという、ひじょうに暗い「惑星」がとらえらた。得られたシミュレーション画像には、背景とはっきり区別できる3つの「惑星」の姿が浮かび上がっている。「惑星」の明るさは、1つが木星と同程度、1つは木星の半分、1つは地球と同じくらいである。Trauger氏は、「われわれが行った実験は、今まで発表されたどの方法と比べても、検出能力が1000倍は高いものです」と話している。

新たなコロナグラフの誕生で、地球型惑星の発見が現実的なものとなってきた。共同研究者Wesley Traub氏は、「われわれの実験結果は、ひじょうに重要なものです。なぜなら、系外惑星を直接観測する能力を備えた宇宙望遠鏡の造り方を示したものだからです」とコメントしている。