温度差1400度!系外惑星における昼夜の違いを初めて観測

【2006年10月20日 Spitzer Newsroom

質量、大きさ、公転周期…これまで調べられた系外惑星の性質といえば、惑星全体としての数値である。しかし、ついに表面上の違いを検出することにNASAの赤外線天文衛星スピッツァーが成功した。恒星のすぐ近くを公転する系外惑星の観測から、表と裏で1400度もの温度差があることをつきとめたのだ。


(υ And b の想像図)

υ And b の想像図(提供:NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC))

スピッツァーが観測したのは、40光年の距離にある恒星アンドロメダ座υ(υ And)の周りを回る惑星、υ And bである。1996年に発見された比較的有名な系外惑星で、質量は木星並みだがυ Andのすぐ近くを公転する典型的な「ホットジュピター(解説参照)」だ。

公転周期はわずか4.6日で、強力な潮汐力によって自転周期も同期している可能性が高い。そして、月が地球に対してそうであるように、恒星に対して常に同じ面を向けていると考えられている。ということは、恒星を向いた「昼」の面と反対側の「夜」の面との間には大きな温度差が生じる可能性がある。

その温度差をとらえるべく、NASAの科学者などからなる研究チームは計5日間に渡ってυ Andをスピッツァーで観測した。その結果、惑星υ And bの公転に伴ってυ And系全体から届く赤外線の強さが変化していることがわかった。決して惑星を恒星と分離して撮像することはできないが、地球からは惑星の公転面を斜め上から見ていること、恒星と惑星は重なり合わないことがすでに明らかとされている。つまり、赤外線の強さが変化するのは、公転に伴って惑星υ And bの異なる面を見ているからである。

惑星υ And bには赤外線を強く放射する面(すなわち温度の高い面)とあまり赤外線を放射しない面(温度の低い面)がある。その差を温度に換算すると、なんと1400度もの違いに相当した。さて、同じガス惑星の木星の場合、表面温度はほぼ均一である。υ And bで極端な温度差があるのは、いつも同じ面を恒星に向けているせいだけではない。外層のガスは惑星本体とは異なる速度で回転している可能性が高いからだ。むしろ、温室効果があまり働いてないことが効いているのではないかと考えられる。すなわち、恒星によって高温に暖められても、大気は熱を保持することなく、すぐに赤外線の形で再放射してしまうというわけだ。

史上初めて、惑星の表面で何らかの違いを検出した観測の意味について、研究チームを率いたフロリダ中央大学のJoe Harrington博士はこう説明した。「昼と夜の温度差は、惑星の大気中でどのようにエネルギーが伝わっているかを教えてくれます。つまり、私たちははるかかなたの惑星における天気について調べたことになるのです」

ホット・ジュピター

世界で最初に系外惑星を持つ恒星として確認されたのはペガスス座51番星。1995年のことだった。発見された惑星は太陽系で言えば水星の軌道よりも内側を回り、木星ほどの質量を持っているとみられ、太陽系の惑星から考えると常識はずれの惑星だった。以降、相次いで木星サイズの惑星が発見されているが、こうした惑星につけられた名称が「ホット・ジュピター」。恒星に近くて高温になっている木星型惑星という意味だ。

「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.047 太陽系以外に惑星は見つかっている? より抜粋[実際の紙面をご覧になれます])