「量」から「質」の時代へ − 系外惑星、200個到達

【2006年7月28日 アストロアーツ】

太陽系外惑星の発見数が200個の大台に達しました。近年の観測技術の進歩で、地球のように小さな岩石惑星も発見されています。新たな段階に入ったといえる系外惑星観測について、発見数200個の意味するところ、今後の注目すべき点など、東京工業大学(理工学研究科 地球惑星科学)の井田茂氏よりいただいたコメントを紹介します。


(系外惑星OGLE-2005-BLG-390Lbの想像図)

系外惑星OGLE-2005-BLG-390Lbの想像図。地球の5倍ほどのサイズで岩石と氷から成るこの天体は、現在もっとも地球環境に近い系外惑星と考えられている。クリックで拡大(提供:NASA/ESA and G. Bacon (STScI))

太陽系外の惑星の発見数が200個に達した。系外惑星探査が始まった1940年代から1995年までが0個なのに対して、1995年から2006年の11年で200個というのは、驚くべきハイペースと言っていいであろう。ただ、100個突破に続く大台突破ではあるが、科学的に考えたときには200個というのは、その数だけではあまり意味をもたない。質が問題だ。最近の発見は、以下に述べるように、それだけで質的に重要なものが多くなってきていて、その積み上げが結果として200個という数になっているのだ。その意味では200個は重要な発見の連続を表す指標になっていると言ってもいいかもしれない。

50個突破、100個突破というあたりは、その数だけで科学的にも重要だった。なぜなら、10個や20個では、惑星の軌道や質量といったパラメータの分布を考えるときに統計的な揺らぎが大きく、偶然あるパラメータの惑星が発見されているのか必然的にそうなのかの見分けがつかないからである。50個、100個となると、あるパラメータをもった惑星が多い、少ないということがかなり明瞭になり、そのことは惑星がどのように形成し進化するのかに重要な情報を与える。このような観点だけで考えると、100個もあれば統計的議論がかなりできる。

これまでに発見された系外惑星の多くは、太陽型恒星の周りにある土星以上の質量を持ち中心星に近い惑星で、ドップラー法で発見されたものである。これらのパラメータの惑星については、ドップラー法による観測データはすでに出そろったと言っていいであろう。これ以上データが増えたところで、多少細かいことまで言えるようになるだけで、画期的なことは出てこないと思われる。

トランジット法では、ドップラー法とは違ったデータが得られ、違った惑星の性質がわかる。トランジット法による発見数はまだまだ少ないので、これらの発見数を増やすことは科学的に重要だ。ドップラー法の場合は、今後、太陽型恒星以外での惑星、土星質量以下の惑星、中心星から遠い惑星の観測が重要となってくるであろう。それらの惑星の観測例はまだ少なく、まだまだ驚くような惑星が隠れているとみられる。また、限られたパラメータ範囲の惑星の分布の性質だけを説明できる理論モデルはいくつも存在するが、パラメータの範囲が広がった時に、それも矛盾なく説明できるものは限られるはずだ。したがって、観測データのパラメータ範囲を広げることは、惑星がどのように形成し進化するのかを決定づけることになる。

ドップラー法以外の観測はいまのところあまり効率がよくない。トランジット法は食をおこす確率の低さが問題だ。重力レンズ法は中心星から離れた惑星、低質量の恒星の惑星が見つかりやすく、重要なデータを与えるが、背景の星の前をたまたま通過するという確率の低さがやはり問題となる。ドップラー法での、太陽型恒星以外での惑星、土星質量以下の惑星、中心星から遠い惑星の観測は技術的に難しい。しかし、プラネット・ハンターたちはチャレンジを続けている。確率の低さや技術的困難という難関があるからこそチャレンジしがいがあるし、難関を乗り越えたところで得られるデータの科学的意味が大きいからチャレンジしているのだ。

ドップラー法の高精度化で、地球質量の10倍(土星質量の1/10)というような小さな惑星が続々と発見されるようになってきた。低質量星や巨星の惑星も発見されるようになってきた。トランジット法や重力レンズ法でもネットワーク構築、解析ソフトの高度化で、惑星の発見頻度が上がってきた。

系外惑星200個時代を迎えた今、これからは、どれだけ小さな惑星を見つけたのか、どれだけ中心星から離れた惑星を見つけたのか、太陽型から違う中心星でどれだけ惑星を見つけたのか、に注目していきたい。

(※ 本ニュースは、東京工業大学(理工学研究科 地球惑星科学)の井田茂氏よりいただいたコメントを元に作成しました。)

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