一足早い2007年のハイライト 〜2007年 注目の小惑星による恒星食〜

【2006年7月12日 アストロアーツ】

随分気が早いが、早くも2007年分の小惑星による恒星食の予報が公開された。「Goffin初期予報(※1)」と「Preston早期予報(※2)」だ。それぞれ、Edwin Goffin氏(ベルギー)とSteve Preston氏(米)の計算によるもので、Preston氏は最終的な改良予報も手がけることで知られている。これらの両予報から、特に注目したい現象をピックアップして紹介しよう。


小惑星による恒星食とは、小惑星が恒星の前を通過する現象。太陽系内を運動する暗い小惑星が、明るい恒星の前を通過することで、恒星の明るさがその間だけ暗くなるのだ。この現象は、星図をたよりに目的の星を見つけることさえできれば、小口径の天体望遠鏡でも確認することができる。また、ビデオでの撮影も可能だ。観測には時刻を正確に測ることが大切だが、これもGPSとパソコンなど、道具さえ用意すれば比較的簡単に取り組むことができる。そのため、近年、アマチュアの新たな天体観測ジャンルとしても注目されている。

《1月21日(72)Feroniaと5月13日(1867)Deiphobusは絶好の現象》

(2007年1月21日 小惑星(72)FeroniaによるTYC0759-1227-1(8.9等)の食の予報図

2007年1月21日 小惑星(72)FeroniaによるTYC0759-1227-1(8.9等)の食の予報図

(2007年5月13日 小惑星(1867)DeiphobusによるHIP 53416(8.6等)の食の予報図)

2007年5月13日 小惑星(1867)DeiphobusによるHIP 53416(8.6等)の食の予報図

図はクリックで拡大(以下同様)。提供:早見勉氏(せんだい宇宙館、以下同様)

2007年の小惑星による恒星食で、この2本は恒星が明るく掩蔽帯も広い、見逃すことのできない絶好の条件だ。特に(1867)Deiphobus は、トロヤ群に属する特殊な小惑星だから興味深い。ぜひとも成功観測を期待したいところだ。この他、5月12日(419)Aurelia、 7月23日(145)Adeona、8月9日(15)Eunomiaは、恒星がやや暗いが、小惑星が大型で掩蔽帯が広い。また、12月12日(1323)Tugelaは、恒星が明るく観測しやすい好条件の現象である。

《9月30日明け方、火星による恒星食》

(2007年9月30日明け方、火星による恒星食の予報図)

2007年9月30日明け方、火星による恒星食の予報図

9月30日の明け方、西日本で火星による恒星(HIP 28510 8.4等)の食という珍しい現象が起こる。しかも日本付近では接食となるのだからさらに興味深い。ただし、明るい0等級の火星であるから、意外と厳しい観測となることだろう。1999年5月30日には、火星による HIP 65927(8.1等)があり筆者()も観測したが、火星が明るすぎて恒星を隠す瞬間は判然としなかった。今回はその時よりも火星が1等級ほど暗いのでまだ観測しやすいと思われるが、当日のシーイングが観測の成否を分けることになるだろう。火星の暗縁となる出現に注目しよう。

2007年9月30日明け方
火星によるHIP 28510(8.4等)食の予報
都市名 潜入時刻 出現時刻
東京 食は起こらない -- -- --
名古屋 04h 00m 06s 04h 00m 31s
大阪 03h 59m 34s 04h 00m 42s
岡山 03h 59m 51s 04h 00m 04s
福岡 03h 58m 53s 04h 00m 12s
鹿児島 03h 57m 49s 05h 01m 08s
那覇 03h 56m 12s 04h 01m 41s

(提供:早水勉氏(せんだい宇宙館))

《10月4日、EKBO天体による恒星食》

(2007年10月4日、EKBO天体による恒星食の予報図)

2007年10月4日、EKBO天体による恒星食の予報図

現代では太陽系の周辺付近にも多数の微小天体が存在することが知られており、これらはEKBO(エッジワース・カイパーベルト天体)と呼ばれている。天文学の最先端でもっとも注目される一分野の天体である。ひょっとすると、このEKBOによる明るい恒星食が起こるかもしれない。この超レアケースは、(66652)1999 RZ253 によるHIP 111398(6.7等)の食だ。(66652)1999 RZ253 は1999年9月に初めて観測され、本年初めまででまだわずか31件の位置観測しか得られていない。冥王星よりも遠くにあり公転周期は290年という典型的なEKBOだ。

予報図では掩蔽帯の中心はニューギニア付近を通過しているが、そもそもあまりに遠方で位置観測のデータも少ないため、地球上のどこで食が起こっても不思議ではない。日本もその対象地域にあるので、「奇跡」を信じて観測してみよう。その奇跡に巡り合えるのは観測した者だけなのだから。

2007年に日本付近で起こる、惑星と小惑星による好条件恒星食
現象日時(JST) 星名 恒星の等級 小惑星(No.)名称 小惑星の等級 備考
01/21 19h36m TYC0759-01227-1 8.9 (72)Feronia 12.5 絶好
02/08 19h47m TYC4865-01554-1 9.5 (242)Kriemhild 13.2 重星、好条件
03/02 21h35m TYC0293-00188-1 10.1 (442)Eichsfeldia 13.1 好条件
04/13 21h40m TYC0308-00797-1 9.7 (1096)Reunerta 14.3 好条件
04/23 25h56m TYC5554-00351-1 9.4 (1114)Lorraine 14.5 好条件
05/12 20h24m TYC1353-01125-1 10.3 (419)Aurelia 14.5 好条件
05/13 19h46m HIP 53416 8.6 (1867)Deiphobus 16.1 トロヤ群、薄明中、絶好
07/17 27h24m HIP 1783 9.0 (1070)Tunica 15.9 好条件
07/22 25h08m TYC6971-00826-1 10.7 (145)Adeona 13.0 好条件
08/08 28h06m TYC2404-01235-1 9.8 (15)Eunomia 10.1 好条件
09/22 28h41m 2UCAC 36775669 9.9 (392)Wilhelmina 14.7 好条件
09/29 28h00m HIP 28510 8.4 火星 0.0 要注目
10/04 20h31m HIP 111398 6.7 (66652)1999 RZ253 22.2 要注目、Binary、EKBO
12/11 24h20m HIP 26062 7.0 (2165)Young 14.5 好条件
12/11 29h19m TYC0305-00676-1 9.0 (1323)Tugela 15.4 好条件

※「Occultations of stars by major and minor planets in 2007 (Edwin Goffin)」および「Early updates 2007 (Steve Preston)」より抜粋

※※2007年の惑星、小惑星による恒星食の詳細情報は、せんだい宇宙館の2007年 恒星食の初期予報をご覧ください(資料提供: 早水勉氏(せんだい宇宙館))

※1 Goffin初期予報 :「Occultations of stars by major and minor planets in 2007

※2 Preston早期予報:「Early updates 2007

(注):この天文ニュースは、せんだい宇宙館の早水勉さんにいただいた原稿を元に作成しました。