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ETX望遠鏡とWebカムで惑星撮影にトライ!

惑星撮影のポイント

惑星を中心とする比較的光度の明るい天体であれば、通常の天体望遠鏡で拡大撮影を試みた場合、1/6秒程度の露出で写ります。これは、それほどの追尾精度を要求せず、比較的容易に撮れることを意味します。月であれば、月齢に依存するものの、昼間に風景を撮るときと同じ1/125秒程度で撮ることが可能です。

そして、火星大接近を気に国内でも人気となったWebカメラによる撮影方法を用いれば、1/6秒程度で撮影された1枚の写真を数百枚程度コンポジット(重ね合わせる)処理を行い、飛躍的に解像力を向上させることができるのです。

土星

Registaxで画像処理を行った後の土星。この像では、拡大率が低くWebカメラの性能を生かし切れていません。ある程度、拡大率を上げて明るく写りすぎないようコントラストを下げ、若干暗めに撮影することがポイントです

つまり、1/6秒程度で撮影した天体写真では、眼視で見るときと同じく大気の揺らぎなどの影響を受けたものとなるところを、数百枚も画像処理で写真を重ね合わせることで、機材の追尾精度を追求しなくても、露出時間が何分も稼げるような補完をしてくれるのです。

このため、30秒程度、天体望遠鏡の視野内に惑星がとどまっているほどの追尾が可能であれば、十分に魅力的な惑星写真が撮れるのです。

天体望遠鏡は可能な限り軽量コンパクトなもの

機材は、最小限に、そして軽量さを重視したものを紹介します。最低限この程度のものを揃えれば、後に紹介する程度の写真を撮ることができる、という選定基準です。

もちろん、更なる惑星以外の淡い光を放つ天体も拡大撮影したい、と考えているのであれば最初から見合ったものを選定すべきかもしれません。しかし、手軽に惑星写真を撮ってみることがゴールであり、大きな機材を置く場所に悩む人は必要以上に大きな機材を手に入れるべきではないでしょう。持ち運びがおっくうになってしまうと、楽しさを感じる前に飽きてしまうケースが多いものです。

ETX

ETXシリーズは米Meadeの製品の中でももっともコストパフォーマンスが重視されたものだと言えます

米国Meadeの天体自動導入天体望遠鏡「ETX」シリーズは、2007年4月現在、口径別にETX-80AT、ETX-90PE、ETX-125PEと3モデルがラインアップされています。それぞれは、屈折式の口径80mm、(マクストフ)カセグレン式の口径90mm、125mmです。口径が大きくなるほど多くの光を集めることができ、天体からの光を集める集光力にも優れるため惑星の拡大撮影で重要なものの1つです。しかし、重量も大きくなることを忘れてはなりません。

その中でも、ETX-80ATは、比較的低倍率で天体を楽しむモデルです。倍率50倍前後で星雲、星団や月などを眺め、惑星も見ることができます。しかし、若干今回の趣旨(惑星撮影)には難しい面があります。よって、今回はETX-90PEを取り上げて、その撮影方法を紹介していきましょう。

ETX-90は、ETXシリーズの中でいちばん初期に登場したモデルです。そのため、バランスがいちばん良いとも言えるでしょう。見え方と重量の点、そしてデザインバランスも十分に考えられています。

強いて言えば、ボディ内部がダイキャストではなく硬化プラスチックが使われているため、強度面や追尾精度の点では不利です。そう考えれば、ETX-125PEがベストマッチかもしれません。ある程度重くても問題がない、楽に撮影したいという人はこちらを選ぶのがよいでしょう。

惑星撮影でWebカムが主流になった理由

各種Webカム

ToUcam、LPI、DSIの外観比較。ToUcamには別売の31.7mmスリーブのアダプタを揃える必要があります。LPI、DSI(写真はDSI II)には、標準で31.7mmスリーブが付属しています

Webカメラは、米国フィリップスのToUcamという製品が火星大接近で入手困難になるほど人気になりました。その後、Meadeもこの分野に参入し、Lunar Planetary Imager(通称、LPI)、そしてDeep Sky Imager(通称、DSI)を相次いで発表しました。

後者は、光が淡い天体の撮影にも対応すべく、長露光(最大120分)が可能な性能を持ち備えた製品です。さらに、CCDチップの感度性能が良いものが採用されたため、たとえ惑星撮影であっても感度の良さが有利となります。

ただしこのWebカメラを使う上で気をつけなければならない点は、デジタルスチルカメラとは違い、常にパソコンと接続して使うという点です。パソコン上の撮影ソフト(キャプチャソフト)でWebカメラを制御し、写真画像を取り込むのです。このため、パソコンのスペックにもある程度のものが要求されますが、Windows XPがインストールされていた2000年以降のモデルであれば、概ね問題ありません。Webカメラは、USBバスで接続します(DSIは、USB 2.0が推奨です)。

各種Webカム

Webカメラとパソコンは常に接続しておいて撮影します。写真はその接続形態例です。キャプチャソフトはDSI IIに標準同梱のAutostar Envisage。CCDチップまわりの温度も監視することができます

今回は、ここまで紹介したDSI(Deep Sky Imager)を取り上げて、ETXとの組み合わせを紹介してみましょう。

上記のパソコンの解説でも触れたように、Webカメラの機材(ハードウェア)を制御するソフトウェアが、より良い写真を得るための最初の設定となります。そして、最終的な写真を作り上げる画像処理にも幾つかの設定があります。この2つについても後ほど触れますが、概して撮影までの流れでポイントとなる点は次の通りです。

  • ETXで惑星を自動導入し、自動追尾を行う。
  • アイピースからWebカメラに替えて、パソコン上のキャプチャソフトで追尾されていることを確認する。
  • 撮影設定を行って、最適だと思う設定値の前後でも撮影しておく。

前述のように、何百枚もコンポジット処理をしてくれる優れたものが幾つもあります。今回は、フリーソフトウェアのRegistaxでの画像処理方法を紹介します。

Registaxは、ウェーブレット(Wavelet)変換という独自の画像処理機能を持ち、コンポジット後の画像をさらに向上させてくれる機能を持つソフトです。

ほかにも、DSIに付属されている「Image Processing」と呼ばれるソフトウェアがあります(筆者のYoshi's ETX Site上には、有志による英語マニュアルの翻訳文があります)。そして、市販されている天体写真の画像処理ソフトとして定評のある「ステライメージ」も欠かせないところです。