2007年8月28日 皆既月食

皆既月食とは

月食はなぜ見える

皆既月食は、太陽からの光によってできた地球の影の中を月が通過するときに見られる現象です。つまり、太陽−地球−月が一直線にならんだ時に見られるものなので、つねに月は満月ということになります。「上弦の月の月食」とか「三日月の月食」というのは絶対におきません。

さて、地球の影には大きく2つの種類があります。1つは「本影」と呼ばれる影で、太陽からの光がまったく届かない部分。本影の部分から見ると、太陽は地球によって完全に隠されてしまっています。もう一つは「半影」と呼ばれる影で、本影の外側に大きく広がった部分。ここは太陽の光の一部が届く部分で、ここから見ると太陽の一部が地球からはみだして、部分日食の状態に見えるはずです。

地球の本影と半影

地球の軌道と月の軌道はぴったり重なっているわけではないので、満月のたびに月食がおきるようなことはありません。また、本影と月の通り道も一定ではなく、ときには月の一部が本影をかすめたり(部分月食と)、月全体が本影にすっぽりつつまれたり(皆既月食)するのです。

皆既月食になると、月は地球の本影の中に入ってしまいますが、完全に暗くなってしまうわけではなく、わずかに赤味をおびて見えます。これは、地球の大気層を通過した赤い光が月面をわずかに照らすためです。

ステラナビゲータで調べてみよう

太陽の光を地球がさえぎることで月食が起きることは、天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」で再現するとよくわかります。Ver.8からの新機能、「月の地名表示」と「ほかの天体から見た星空の再現」を使って、月食中に月から地球を見てみましょう。

なお、スクリーンショット画像はクリックすると拡大表示されます。

月食の晩に時刻を設定

まずは月食当日、8月28日の午後8時に時刻を合わせてみましょう。南東の空に、赤銅色に輝く月が見えます。

なお、[お気に入り]メニューから[02 月食]の中の「2007-08-28 皆既月食(東京での月出帯食)」を選ぶと、この場面を一発で再現することもできます。

さて、この瞬間に月ではどんな光景が見られるのでしょうか。

太陽・月ダイアログ

では、月面上のどの場所へ行くか決めるとしましょう。月を視野の中央に入れてズームアップした上で、[太陽・月]ダイアログから月の「地名」をオンにします。

月の地名が表示された

月の代表的なクレーターや海の名前が表示されました。月の南側(画面では下)にある「ティコ」クレーターは、ひときわ明るくてよく目立つ地形です。今回は、ティコクレーターから地球を見てみましょう。

場所ダイアログ

[場所]ダイアログを開いて、左上の[天体]から「月」を選びます。ティコクレーターは赤枠で囲った位置にあるのでクリックして移動しましょう。星図が、ティコクレーターから見た空に切り替わります。

月から見た地球と太陽

[惑星]の「名称」を表示します。また、[太陽]の「名称」を表示するとともに、[太陽・月]ダイアログから「光芒」をオフにします。

北の方角に、地球と太陽が重なって表示されました。

月から地球をズームアップ

ズームアップしてみましょう。太陽は地球によって完全に隠されています。この時刻に見えているのは太平洋地域(逆に言えば、この時刻に皆既月食を見ることができるのは太平洋地域に限られるのです)。ちなみに、下の方に日本列島の明かりも見えています。

地球の向こうから太陽が出てきた

時刻を1時間ほど進めてみると、地球の向こうから太陽が出てきました。「部分日食」の状態です。ということは、逆に地球からティコクレーターを見ると…

ティコクレーターと地球の影

[場所]ダイアログから地球に戻り、月の方を見てみました。どうやら、ティコクレーターは地球の本影を外れて、半影の中にあるようです。月全体は、部分月食の状態です。

この図では、わかりやすいように[太陽・月]ダイアログから「本影・半影の輪郭」を表示しています。

もっと知りたい方のために

ステラナビゲータ Ver.8ここでご紹介した天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」は、天文現象を再現するだけでなく、そのしくみを理解するときにも大変役に立ちます。(最新版は Ver.9 です)

宇宙のなぞ研究室「月食はなぜおこる?」
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