準惑星候補天体の表面にも氷とメタンの層が存在?

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【2011年8月25日 ケック望遠鏡カリフォルニア工科大学

アメリカの研究グループが準惑星候補天体の1つである2007 OR10の観測を行ったところ、その表面には氷が存在しており、さらにメタンも存在している可能性があることがわかった。メタンのような揮発性の物質がどのくらいの大きさの天体で存在できるのか、その境界を探るうえで2007 OR10は有用かもしれない。


準惑星2007 OR10のイメージ

準惑星2007 OR10のイメージ(提供:NASA)

太陽系の遠方、冥王星が存在する軌道近辺は非常に温度が低いため、そこそこの大きさを持つ天体は氷の火山を持ち、噴火によって表面に氷をまき散らすことがあると考えられている。

今回観測された天体2007 OR10も、そのような準惑星候補天体の1つだ。2007年に発見された際には、氷に覆われていて表面はきっと白いだろうということで、一部研究者の間では「Snow White(白雪姫)」というあだ名が付けられていた。

しかし発見からほどなくして、米・ハワイ島にあるケック望遠鏡の観測から、2007 OR10は太陽系の中で最も赤い天体の1つであることがわかった。同じような軌道に位置する他のいくつかの準惑星やその候補天体も同様に赤いことが知られていることから、この2007 OR10も400個近くある太陽系外縁天体の平凡な1天体に過ぎないと思われた。より詳細に調べるため近赤外線による観測が望まれていたが、ケック望遠鏡に搭載されていた近赤外線カメラは既に引退しており、観測できなかったのだ。

Mike Brown氏(カリフォルニア工科大学惑星天文学教授。エリスやマケマケなど、多くの準惑星・太陽系外縁天体の発見者として知られる)らは今回、新しく開発された「FIRE」分光計を使い、チリのラス・カンパナス天文台にあるマゼラン望遠鏡で2007 OR10を観測した。結果、予想通りその色は赤かったが、表面には氷が存在していることもわかった。氷は確かに太陽系の外側ではありふれたものであるが、もちろん赤いわけはない。ではなぜ2007 OR10は赤いのか。

同じような天体の例として2007 OR10よりも少し小さいクワーオアーが挙げられる。クワーオアーも色は赤いが、表面には氷があると言われている。しかしクワーオアーは冥王星ほど大きくないため、一酸化炭素や窒素など揮発性の物質はいくらかのメタン以外ほとんど存在していないと考えられている。メタン(CH4)は炭素と水素でできているが、宇宙からの放射に長い間さらされるとメタンが長い炭化水素鎖(多くの炭素と水素を含む物質で、赤く見える)に変化し、これが氷の表面を覆っているので赤っぽいのだろう。

2007 OR10でも同じことが言えそうだ。しかし、氷の存在は確かめられたが、メタンが本当に存在しているかどうかは未だはっきりとしていない。メタンの存在をしっかりと確認するにはケック望遠鏡のような大型の望遠鏡が必要になる。

もし2007 OR10に本当にメタンが存在していたら、他の多くの太陽系外縁天体とは異なり、揮発性物質を持つ数少ない魅力的な研究対象の天体に名を連ねることになりそうだ。

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