初めて太陽を全角度同時撮影 「STEREO」2機が左右から

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年2月8日 NASA

2月6日、NASAの太陽観測衛星「STEREO」2機が太陽をはさんで180度の位置に到達した。太陽の全容を同時に観測することで、新しい太陽の姿が見えてくることが期待される。


(180度に展開した2機のSTEREOのイメージ画像)

太陽と2機のSTEREOの位置関係を表したイメージ図。5年がかりで180度に展開した。クリックで拡大(提供:NASA)

(STEREOがとらえた太陽の画像)

2月2日に撮影された太陽の姿。地球から見えない側も「STEREO」によって余すところなくとらえることができる。クリックで拡大(提供:NASA)

直径は地球の109倍。質量は33万倍。この巨大な恒星である太陽の全容を、2機の衛星が左右合わせて360度から同時にとらえることに初めて成功した。

2006年10月に打ち上げられた太陽観測衛星「STEREO」は、地球の公転軌道上の異なる2点から太陽を3D観測する。1機は地球の前方に、もう1機は後方に向かって徐々に地球から遠ざかっていき、今年2月6日に太陽をはさんで180度にまで展開した(画像1枚目)。

画像2枚目は、2機の「合」直前に撮影した画像を合成したもので、地球から見て裏側の太陽が映っている。2月6日以降は、中央の黒い縦線となっている隙間部分も含めた完全なデータを得ることができるだろう。下記〈参照〉先では、1月31日の撮影画像に補間処理を施した全球動画も見ることができる。

これらの画像は、太陽が放射する「極紫外線」と呼ばれる光をとらえている。極紫外線は、フレア(注1)や太陽津波(注2)などの激しい活動につながる太陽の状況を伝える。

コロナ質量放出(CME注3)やフレアといった爆発的現象は、人工衛星や飛行機の通信障害、停電を引き起こすことがある。STEREOの観測で、地球と反対側の太陽活動の様子が予めわかれば、太陽が自転してその領域が地球側に向いたときの影響に対処することができる。

また、太陽全球を同時に観測することで、球面各所で起こる現象の関連を調べやすくなる。STEREOサイエンスチームのAngelos Vourlidas氏は、「太陽の活動についてはまだ根本的にわかっていないことが多いんです。全球観測によって、パズルのピースを埋めていくように謎の全容が明らかになっていくでしょう」と期待する。

STEREOは今後さらに地球から遠ざかりながらお互いの距離を縮め、2015年には太陽をはさんで地球のちょうど反対側ですれ違う予定だ。

注1:「フレア」 太陽大気中で発生する爆発現象

注2:「太陽津波」 太陽表面の爆発から球面に広がる、高温プラズマと磁気の巨大な波

注3:「コロナ質量放出」 太陽の複雑な磁場の活動によって、ばく大な量の荷電粒子やエネルギーが放出される現象