WISEが見せた、宇宙空間をつきすすむ星の姿

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【2011年1月26日 NASA

赤外線天文衛星「WISE」がとらえた、へびつかい座ζ星付近の画像が公開された。超新星爆発で勢いよく振り飛ばされた星のようすが手にとるようにわかる。


へびつかい座ζ星

へびつかい座ζ星付近。赤外線の波長で色分けしている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA)

へびつかい座ζ星の位置

1月末の朝5時ごろ、東京で見えるへびつかい座ζ星(2.5等)の位置をステラナビゲータで表示。クリックで拡大。

かつてのパートナーから離れた巨大な恒星がちりの中をかきわけて進む際に出来るバウショック(弧状衝撃波)が、NASAの赤外線天文衛星「WISE」でとらえられた。

へびつかい座ζ(ゼータ)星は、可視光では、さほど明るくはない赤い星にしか見えないが、この赤外線画像では画像中央に青く光り、ちりやガスなどの星間物質に覆われているのがわかる。真の姿は、太陽の20倍も重く6万5000倍も明るい青い星だが、この星間物質のために人間の目には暗く映るのだ。

かつてはさらに重い星との連星だったが、その星が超新星爆発とともに最期を迎えた際に重力がなくなって振り飛ばされたと考えられており、秒速24kmで画面の左上方向に突き進んでいる。

へびつかい座ζ星の進行方向には、ちょうど船が進むと水面に出来る波紋のように見えるアーチ状のバウショックが輝いている。星が放出する物質と周りの物質がぶつかって赤外線の光を放っている部分だ。人間の目では見えないが、WISEのような赤外線望遠鏡ではその様子をはっきりとらえることができる。

「WISE」は2009年12月に打ち上げられ、2010年1月に観測を開始してから約1年が経過した。赤外線で全天サーベイ観測を行っており、遠方銀河や星形成領域の観測、赤外線天体のカタログ化、太陽系内の新天体発見などに貢献している。