古典的な系外惑星検出法がついに成功

【2009年6月2日 NASA JPL

系外惑星を見つける方法として50年前から試みられていた「アストロメトリ法」が、初めて成果をあげた。発見されたのは、恒星と惑星の直径がほとんど同じという奇妙な惑星系である。


(恒星VB 10とそのまわりを回る系外惑星VB 10bの想像図)

恒星VB 10とそのまわりを回る系外惑星VB 10bの想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

(VB 10系と太陽系のスケールの違いを示した図)

VB 10系と太陽系のスケールの違いを示した図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

一般に系外惑星を探すときは、惑星自体の姿ではなく、惑星の影響によって中心の恒星のスペクトルや光度に生じるわずかな変化を検出するという手法がとられてきた。1995年以来、「ドップラー法」や「トランジット法」と呼ばれるこうした手法で、300個以上の系外惑星が見つかってきた。

ところで、系外惑星第1号発見に至るまでには長い捜索の歴史がある。その中でドップラー法などよりも古く、50年前から試みられながら、失敗に終わってきたのがアストロメトリ法だ。

惑星は恒星の重力にとらえられて回っているが、恒星の方も惑星の重力に引きずられていて、惑星の公転に伴ってわずかに動いている。こうして恒星の位置が変化するのをとらえるのがアストロメトリ法だが、ひじょうに高い分解能が必要とされたため成功例はなかった。代わって脚光を浴びることになったドップラー法は、恒星の位置ではなく、われわれに近づいたり遠ざかったりすることでスペクトルが変化するのをとらえる方法である。

「アストロメトリ法は太陽系に配置が似ている惑星系、つまり第二の地球が存在するかもしれない場所を探すのに有効です」とNASAジェット推進研究所のSteven Pravdo氏は語る。地球に近い恒星であれば、より高い精度で位置を測定できる。その大半は質量が小さくて暗い恒星なので、惑星が恒星に近くても、あまり熱くならずに生命に適した環境を保てる可能性がある。

Pravdo氏らはパロマー山天文台の5mヘール望遠鏡で、12年間にわたり30個の恒星を断続的に観測し続けた。ヘール望遠鏡は60年の歴史を持つ古い望遠鏡だが、大気による恒星像のゆらぎを補正する補償光学装置を備え、さらに16メガピクセルのCCDで撮影することで高い精度を実現した。その結果、わし座の方向約20光年の距離にある恒星「VB 10」の位置に、3km離れた髪の毛1本ほどのわずかなずれが確認された。アストロメトリ法による初めての系外惑星発見である。

発見された惑星「VB 10b」は巨大なガス惑星で、質量は木星の6倍。一方、VB 10は質量が太陽の12分の1(木星の約90倍)ほどしかなく、かろうじて恒星としての輝きを保っている。両者の質量には大きな差があるが、直径はほとんど同じだと考えられている。


ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、VB 10bが存在する方向を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された約300個の恒星を、追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ(Ver.8以降)をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。

なお、惑星VB 10bが存在する恒星には「VB 10」だけではなく、さまざまな呼び方があります。「コンテンツ・ライブラリ」からダウンロードできるデータには、「V1298 Aql」として登録されています。