地上の小惑星、砂漠で発見

【2009年3月30日 SETI

昨年10月に発見され、直後に地球に衝突して話題となった小惑星2008_TC3の破片探しが進められている。落下前に見つかった小惑星が隕石として回収されるのは初めてのことで、宇宙の天体を地上の実験室で分析するまたとないチャンスだ。


(回収された小惑星2008 TC3由来の隕石)

回収された2008_TC3由来の隕石。クリックで拡大(提供:Jenniskens, et. al.)

(捜索中の学生たちの画像)

隕石を捜索する学生たち。クリックで拡大(提供:Jenniskens, et. al.)

小惑星2008_TC3は世界時2008年10月6日に見つかり、同7日午前2時45分にアフリカのスーダン北部で大気圏に突入した。ヌビア砂漠が広がる無人に近い地域だったこともあり、衝突を直接観測できた専門家はいない。しばらくの間、遠方からの間接的な観測以外にデータは集まらないと思われたが、米・SETI研究所で流星を研究するPeter Jenniskens氏は隕石の回収にこだわった。

Jenniskens氏は自らスーダンにおもむき、衝突痕の撮影に成功していたハルトゥーム大学物理学部物理学科の研究者Mauwia Shaddad氏と合流。現場付近の村人から目撃証言を得て、隕石の捜索を始めた。2008_TC3は落下中に爆発して粉々になったと推測した両氏は、ローラー作戦を展開。約1kmの直線上にハルトゥーム大学の学生と職員45人を並ばせ、砂漠をしらみつぶしに捜索したのだ。

捜索を開始した12月6日のうちに、直径1.5cmの黒い小片が見つかった。表面を覆う薄いガラス状の膜は、高熱で溶かされた証拠。最初の隕石片発見であり、宇宙で発見された小惑星の破片を、研究者が初めて手にする瞬間でもあった。捜索はその後も数回に渡って続けられ、これまでに約280個、総重量数kgの隕石片が見つかっている。

隕石は、黒い炭素のかたまりと砂糖のようなガラス質の鉱物結晶でできていた。分析の結果、2008_TC3由来の隕石は地球へ飛来する前に一度溶けたことがある「ユレイライト」というたいへん珍しいタイプであることが判明したが、そのユレイライトの中でも特異な性質を持っていた。全体が穴だらけで、ひとかたまりの天体として存在できたのが不思議なほど、もろかったのである。天体の中心付近では、岩石は圧力で押しつぶされる。2008_TC3は、大きな小惑星の表面からはがれ落ちたらしい。

Jenniskens氏らによれば、2008_TC3は小惑星としてはF型と呼ばれる、光の反射率がひじょうに小さなタイプに属する。F型小惑星の成分は謎とされていたが、今回の研究により、少なくとも一部には炭素や鉄が含まれていることが示唆された。

隕石のタイプと小惑星のタイプを結びつけるのは難しい。小惑星の成分は、反射光のスペクトルがよほど特徴的でない限り解明しにくいのだ。地球へ帰還中の日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星「イトカワ」のサンプルを届けてくれると期待されている。一方で、次の衝突前天体を発見するべく、世界中の研究チームが精度を向上させながら観測プロジェクトを展開している。

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