小惑星「イトカワ」の地形に、7つの日本地名加わる

【2009年3月4日 JAXA

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が申請した、小惑星「イトカワ」にある14の地形の名称が、国際天文学連合(IAU)によって正式に承認された。14の名前には、「淵野辺」や「鴨居」など探査機「はやぶさ」と関連の深い7つの日本の地名が含まれている。


(新たに命名された地名を示した画像)

「イトカワ」に命名された地名(「はやぶさ」が撮影した写真に記載したもの)。クリックで拡大(提供:JAXA)

(「イトカワ」に向かって飛行する「はやぶさ」の想像図)

「イトカワ」に向かって飛行する「はやぶさ」の想像図。クリックで拡大(提供:JAXA・作画 池下章裕)

小惑星探査機「はやぶさ」は、2003年5月に打ち上げられ、2005年11月に小惑星「イトカワ」に着陸し、岩石採取に成功した。「はやぶさ」による観測で、「イトカワ」の構造や組成、その起源が解き明かされた。その成果は、日本の惑星探査史上初めて、科学雑誌「サイエンス」の特集号となった。

JAXAは国際天文学連合(IAU)に対し、「はやぶさ」が観測した「イトカワ」の地形のうち10のクレーターと4つの地域について命名の申請を行った。

提案された14すべての地名が2月19日IAUによって承認され、公式な地名となった。

日本として小惑星の表面に14もの名前を提案し、認められたことはこれまでに例がない。また、日本の地名がこれだけ多く、小惑星の表面につけられたのも初めてである。

クレーターや地域の名前は以下のとおり。

《クレーターにつけられた名称とその説明》

地名 英文表記 説明
1 カタリナ Catalina アメリカのアリゾナにある天文台の名称。地球接近小惑星の観測プロジェクトが進められている。
2 フチノベ
(淵野辺)
Fuchinobe 神奈川県相模原市の地名。はやぶさ開発、運用の拠点であるJAXA相模原キャンパスの最寄り駅の名称でもある。
3 ガンド Gando カナリア諸島にあるスペインのロケット射場の名称。
4 ハマグイラ Hammaguira サハラ砂漠(アルジェリア)にあったフランスのロケット射場の名称。
5 カミスナガワ
(上砂川)
Kamisunagawa 北海道空知郡の町名。微小重力のテスト装置がある。
6 カモイ
(鴨居)
Kamoi 神奈川県横浜市の地名。「はやぶさ」製造の拠点であったNEC東芝スペースシステム株式会社の事業所があった。
7 コマバ
(駒場)
Komaba 東京都目黒区の地名。旧文部省宇宙科学研究所があった。
8 ローレル Laurel 米国メリーランド州の市名。ジョン・ホプキンス大学応用物理研究所(APL/JHU)がある。
9 ミヤバル
(宮原)
Miyabaru 鹿児島県肝属郡肝付町の地名。JAXA内之浦宇宙空間観測所のレーダーサイトがある。
10 サンマルコ San Marco ケニヤ沖合のインド洋上の石油採掘プラットフォームで、イタリアのロケット打ち上げの洋上基地として使われた。

《地域につけられた名称とその説明》

地名 英文表記 説明
11 アルコーナ Arcoona Regio 「はやぶさ」のカプセルが回収されるオーストラリアの砂漠近くの地名。
12 リニア LINEAR Regio マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の地球接近小惑星研究のプロジェクト名。(Lincoln Near Earth Asteroid Research)小惑星イトカワを発見した。
13 オオスミ
(大隅)
Ohsumi Regio 鹿児島県の半島名。JAXA内之浦宇宙空間観測所がある。
14 ヨシノブ
(吉信)
Yoshinobu Regio 鹿児島県熊毛郡南種子町の地名。JAXA種子島宇宙センターのロケット発射場がある。

《既に承認済みの地域名称》

地名 英文表記 説明
1 ミューゼス シー MUSES-C Regio 小惑星探査機「はやぶさ」のミッション名。
2 サガミハラ
(相模原)
Sagamihara Regio 神奈川県の市名。JAXA相模原キャンパスがある。
3 ウチノウラ
(内之浦)
Uchinoura Regio JAXA内之浦宇宙空間観測所がある鹿児島県の旧町名。

小惑星「イトカワ」

日本のロケット工学の父ともいうべき、故糸川英夫にちなんで命名された。日本の小惑星探査機「はやぶさ」のターゲットとなり、人類が探査機を送り込んだ最小の天体。地球近傍小惑星の1つで、地球や火星の軌道と交差する楕円軌道を1.5年周期で公転する。大きさは0.54×0.27×0.21km。

「はやぶさ」は2005年9月12日にイトカワに到着し、11月20日と26日にはタッチダウンも行われた。間近からの観測で、2つの天体が合体したラッコのような形をしていることが判明。「ミューゼスの海」などのように小石で覆われた平坦な地域がある一方、地表の大部分は岩が密集し凹凸が激しいこともわかった。さらに、密度が小さいことから、イトカワは母天体が衝突で砕かれた後に再集積してできた「がれきの寄せ集め」ではないかと考えられている。
ステラナビゲータ Ver.8天体事典より)