日本出身3氏にノーベル物理学賞

【2008年10月7日 Nobelprize.org

日本時間10月7日、スウェーデン王立科学アカデミーは2008年ノーベル物理学賞を南部陽一郎氏(米国籍)、小林誠氏、益川敏英氏に与えることを発表した。


ノーベル物理学賞の半分は「素粒子物理学における対称性の自発的な破れの発見」で南部陽一郎氏に、残る半分は「自然界にクォークが3世代以上あることを予言する、対称性の破れの起源の発見」で小林誠氏と益川敏英氏に分け与えられる。

南部氏は1921年生まれで、1952年に東京大学で理学博士を取得、同年に渡米した。プリンストン高等研究所などを経て、現在シカゴ大学名誉教授。

1960年ごろ、超伝導理論などで用いられていた「対称性の自発的な破れ」という概念を素粒子物理学に導入した。この考えは、素粒子が質量を獲得した理由を説明するなど、現代の素粒子物理学の根幹を支えるものであり、自然界に存在する「4つの力」のうち「電磁気力」「弱い力」「強い力」を統一的に説明する「標準モデル」にもつながっている。南部氏はクォークに3種類の「色」があるとする理論や、超ひも理論の先がけとなる研究でも知られる。

小林氏は1944年生まれで1972年に名古屋大学で理学博士を取得、現在高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)名誉教授。益川氏は1940年生まれで1967年に名古屋大学で理学博士を取得、現在京都大学基礎物理学研究所名誉教授。

小林氏と益川氏は、1972年に「CP対称性の破れ」に関する理論(小林・益川理論)を発表した。CP対称性とは、物質と反物質が電荷の正負と空間の左右を入れ替えればまったく同一であるとする考え方。当時、素粒子のクォークは3種類発見されていたが、両氏はクォークが6種類以上存在し、それが3つ以上の「世代」に分類されることを予言して、CP対称性の破れを説明した。1994年までに3種類の新しいクォークが見つかるなど、小林・益川理論の予言は近年次々と実証されてきた。

なお、宇宙が誕生したときには物質と反物質がほぼ同数誕生したが、CP対称性の破れがあったために物質の数がわずかに上回り、現在の宇宙が存在しているとされている。ここで作用したCP対称性の破れは小林・益川理論だけでは説明しきれず、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)による実験的な解明に期待がかかっている。