水星の地形に名前がつけられた

【2008年4月30日 MESSENGER Web Site

国際天文学連合(IAU)の命名ワーキンググループ(WGPSN)が、今年1月にNASAの水星探査機メッセンジャー(MESSENGER)が発見した新しい地形の名前を決定した。


(新たに命名された地形を示した画像)

新たに命名された地形を示した画像。クリックで拡大(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington、以下同様)

(Pantheon Fossaeの画像)

水星では初めて発見された溝状の地形「Pantheon Fossae」の画像。クリックで拡大

水星探査機メッセンジャー(MESSENGER)は、2011年の周回軌道投入に向け、今年の1月に最初の水星スイングバイに成功した。探査機の水星接近は33年ぶりのことで、接近時に撮影された画像から、新たな地形が発見された。

新しく発見された多くの崖のうち一群の崖は、イギリスの自然科学者で『進化論』を提唱者したチャールズ・ダーウィンが世界中を航海した際に乗り込んだ船「ビーグル号」にちなみ、「Beagle Rupes」と名づけられた(Rupesとは、ラテン語で崖の意味)。

また、カロリス(Caloris)盆地の中央に、水星では初めて溝状の地形が発見された。このような地形は、ラテン語で溝を意味する「Fossa」(複数形はFossae)と呼ばれる。今まで命名規則の決まっていなかった水星のFossaについて、国際天文学連合(IAU)の命名ワーキンググループ(WGPSN)は、有名な建築物の名前をつけることとした。

そして、初めて発見されたこのFossaeは、2世紀の古代ローマの神殿パンテオンから名をとって「Pantheon Fossae」と命名された。神殿パンテオンとPantheon Fossaeは、ともに似たようなドーム状の形と放射状の構造をもっている。

なお、新しく発見されたクレーター10個には、有名な芸術家や音楽家、作家などの名前がつけられた。個々の名前は以下を参照のこと。

《クレーターにつけられた名前と由来する人物》

名前 由来する人物
Apollodorus2世紀に活躍したギリシアの建築家。ローマのパンテオン神殿をデザインし、功績を残した
AtgetEugène Atget、パリの風景や建造物の写真で知られるフランスの写真家
CunninghamImogen Cunningham、肖像写真や静物写真、造形美の研究で知られる、アメリカの写真家
EminescuMihail Eminescu、近代ルーマニア語の父として知られるルーマニアの詩人
KertészAndrė Kertész、フォトエッセイを発展させた写真家として知られる、ハンガリー出身でアメリカの写真家
NerudaPablo Neruda、チリの詩人であり政治家、ノーベル賞受賞者でもある
RaditladiLeetile Disang Raditladi、ボツワナの詩人・劇作家。ボツワナで最初の政党をつくったことでも知られている
SanderAugust Sander、肖像写真で知られるドイツの写真家
SveinsdóttirJúlíana Sveinsdóttir、アイスランド初の女性画家、織物作家
Xiao Zhao蕭照、中国・南宋時代(1127〜1279)の芸術家で、宮廷画家として高祖皇帝に仕えた