太陽系外縁部に未知の惑星の存在を予測

【2008年2月28日 神戸大学 大学院理学研究科

太陽系の惑星は9個になるかもしれない。神戸大学の研究者が、太陽系外縁部の理論的な研究から、未知の惑星の存在を予測した。大規模なサーベイ観測が開始されれば、この惑星は10年以内に発見される可能性があるという。


(「惑星X」の想像図)

「惑星X」の想像図。直径10000〜16000キロメートルの、氷でおおわれた天体と考えられる。右側の光点ははるかなる太陽。クリックで拡大(提供:Fernando D'Andrea/Southlogic Studios)

(予想される「惑星X」の軌道)

予想される「惑星X」の軌道(赤線)。海王星(青線)の倍以上遠い。軌道面は20〜40度傾いている。クリックで拡大(提供:Patryk Sofia Lykawka/Kobe University)

(サイズ比較)

サイズ比較。「惑星X」は既知の準惑星よりも大きい。クリックで拡大(提供:Patryk Sofia Lykawka/Kobe University)

神戸大学大学院理学研究科のパトリック ソフィア リカフィカ(Patryk Sofia Lykawka)研究員と向井 正教授は、太陽から80天文単位(120憶キロメートル。1天文単位は地球から太陽までの距離)よりも遠いところに、未知の惑星が存在するという予測を発表した。

海王星軌道よりも外側の領域に多数見つかっている太陽系外縁天体(TNOs=Trans-Neptunian Objects)の軌道分布には、いくつかの謎があった。円軌道のTNOsが50天文単位付近よりも遠いところに見当たらないのはなぜなのか。海王星の影響が小さい50天文単位以遠に大きくゆがんだ軌道や大きな軌道傾斜角を持つTNOsがあるのはなぜなのか。これらを矛盾なく説明できる定説はこれまでなかった。リカフィカ氏らは、TNOsの軌道進化の数値シミュレーションを行う際に、未知の惑星(仮に「惑星X」とする)の存在を仮定すると、現在の軌道分布をうまく説明できることを突き止めた。研究論文はアメリカ天文学会発行の『Astronomical Journal』誌2008年4月号に掲載される。

提案されたモデルにより、太陽系外縁部の40億年にわたるシナリオが示された。太陽系形成初期には、当時の天王星・海王星軌道付近に「惑星X」が存在し、それが重力散乱で遠方に飛ばされ、海王星と6:1の共鳴軌道(海王星6周の時間で1周する軌道)に捕獲された。当時の海王星は、現在の位置よりも10天文単位ほど内側にあったが、マイグレーションと呼ばれる外向きの惑星移動で現在の位置、太陽から30天文単位まで大移動した。その影響により「惑星X」の軌道も80天文単位以遠へ移動したはずであり、そうした仮定のもとに数値シミュレーションを行ってTNOsの軌道進化を追跡したところ、TNOsの軌道分布が現在観測されている分布によく似たものになったという。「惑星X」の現在の軌道は、近日点距離80天文単位以上、軌道長半径100〜175天文単位の楕円軌道で、軌道傾斜角は20〜40度。「惑星X」は地球質量の0.3〜0.7倍、サイズは地球よりもやや小さい氷惑星と予測される。

「惑星X」の存在が理論的に予測されるという展開は、1846年の海王星の発見の経緯を思わせる。海王星は、ひとつ内側をまわる天王星の軌道のふらつきから位置が予測されて見つかった。『理科年表』によると、海王星の発見者は、理論予測したルベリェとアダムス、そして実際に観測して発見したガルレの3名ということになっている。

もし「惑星X」が発見されたら、発見者は誰になるのだろうか。国立天文台の渡部潤一准教授によると、「海王星発見のように理論予測した人が発見者に加わるかどうかは、今のところ明確な基準がない」という。また、太陽系の惑星の定義に当てはまるかどうかを判定するにあたっては、「軌道上に似た天体が無いことを確かめる必要があり、時間がかかるだろう」ともコメントしている。

もし「惑星X」が現在80天文単位付近にあれば、明るさは14〜18等程度であると考えられる。「惑星X」を最初に見つけるのは、大規模な自動サーベイシステムか、それともアマチュアによる捜索か。黄道から20〜40度離れた領域に身をひそめ、「惑星X」は今夜も発見されるのを待っているかもしれない。

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