火星の表面に丸い穴 地下洞窟への入り口か

【2007年9月25日 NASA Mission News

火星の無人探査機の画像から、表面に穴らしき地形が7個見つかった。その下には洞窟が広がっている可能性がある。こうした地下洞窟への入り口が別の場所でも見つかれば、そこからは微生物が見つかったり、未来の有人火星基地の建設地になったりする可能性がある。


洞窟の可視光画像と赤外線画像

見つかった「穴」の1つ。左から順に、可視光画像、赤外線で見た昼間の画像、赤外線で見た日の出前の画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/ASU/USGS)

洞窟一覧

今回見つかった7つの洞窟。中央下の画像には2つ写っている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/ASU/USGS)

穴のような地形は、NASAの火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」と「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した画像から見つかった。マーズ・オデッセイは2001年から現在にいたるまで火星を撮影し続けている。一方のマーズ・グローバル・サーベイヤーは1997年から活動していたが、昨年11月に通信がとだえた。

見つかった「穴」は全部で7つ。直径は100〜250メートルで、クレーターと比べて深い地形であることは画像から明らかだ。マーズ・オデッセイが赤外線カメラで温度を測定した結果、これらが確かに穴であると裏付ける結果が得られた。

マーズ・オデッセイの赤外線画像では、火星表面が午後をむかえて暖かくなっているころ、「穴」の温度は低め(画像では暗め)である。一方、火星表面における日の出前、すなわち最低気温のころは、「穴」の温度が明らかに高い(画像では明るい)。「穴」における一日の温度変化は、地表に比べてわずか3分の1。これは地球の巨大洞窟(温度がほぼ一定)ほど安定しているとは言えないが、少なくとも深い穴が示す温度変化には違いないという。

「単なる深い縦穴であるにせよ、広大な洞窟へ通じているにせよ、これらは火星の地底世界への入り口なのです。火星のどこかに存在する洞窟が、過去の生命や現存する生命にとっては小さな聖域となっているかもしれませんし、未来の人類にとってはシェルターとなるかもしれません」と語るのは「穴」を発見した研究チームの1人で米国地質調査所のTim Titus氏。

一方、研究チームを率いた米国地質調査所宇宙地質学チームおよび米・北アリゾナ大学のGlen Cushing氏は、「(今回の穴は)極端に高い場所で見つかったので、人間が居住するのにも、微生物を探すのにも向かないでしょう」と指摘する。今回見つかった「穴」は火星有数の高山「アルシア山」の斜面から見つかった。その成因も、火山活動と関連しているのではないかと研究チームは分析している。

しかし、今回の発見に刺激されて、数々の研究者がマーズ・オデッセイや昨年11月に探査を始めたNASAの火星周回探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」を使って7つの「穴」を詳しく調べている。究極の目標は、もっと低くて火星探査の際に訪れやすい場所に穴を見つけることだ。

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