若い恒星の周りに「だ円形の円盤」を発見か

【2007年7月27日 Hubble Newscenter

恒星HD 15115の周りには、多くの若い恒星と同じように、ちりの円盤が存在する。しかし、この円盤は私たちが想像するようなレコード形ではなく、一方へ極端にかたよった「だ円形」をしているらしい。


(ハッブルがとらえたHD 15115の円盤の画像)

HSTが可視光で撮影した、HD 15115の円盤(青く針状に伸びた構造)。黒い丸のように写っているのは、恒星の光をさえぎるマスク。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and P. Kalas (University of California, Berkeley))

くじら座の方向約150光年の距離にあるHD 15115には、2000年に行われた近赤外線波長の観測で、初めてちりの円盤の存在が示唆された。そして、2006年にNASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した画像から、何かがHD 15115を取り巻いていることまでは確かめられた。

しかし、研究者たちはこれをただちに「円盤」と断定することはできなかった。地球からはHD 15115を真横から見ることになる。もし円盤があれば、左右に同じ長さだけ突き出た「針」のような構造が見えるはずだ。ところが、画像中左下の青い「針」に比べて、右上の「針」はあまりにも長い。

2006年から2007年にかけてケック天文台の10メートル望遠鏡が観測を行い、ようやく円盤である確証が得られた。どうやらこの円盤はだ円形なのではないか、というのが研究者たちの解釈だ。つまり円盤の中のちりは、太陽系の惑星のように真円に近い軌道ではなく、どちらかと言えば彗星のように恒星に近づいたり遠ざかったりする軌道を回っているというのだ。

観測を行ったカリフォルニア大学バークレー校のPaul Kalas氏らの研究チームは、円盤の内側で形成された惑星や付近の恒星の重力がちりに影響して、いびつな円盤を作ったのではないかと考えている。

巨大惑星がほかの天体に与える影響は大きい。われわれの太陽系でも、似たような例があったのではないかとされている。海王星は太陽系最遠の惑星だが、もともとは土星と天王星の間で形成された可能性がある。そして、木星と土星との間で重力の相互作用を起こし、はじき出されたのかもしれない。外側へ移動する海王星自身も、途中にあった無数の小天体を外へ追いやり、それが今日「太陽系外縁天体」として知られる天体群になったとする説が有力だ。

Kalas氏によれば、HD 15115では似たようなことが今まさに進行中である。恒星に近いところで誕生した惑星が別の巨大惑星にはじき出され、だ円軌道を回り始める。そして、残っていたちりもそれにつられて、だ円形の円盤ができたというわけだ。

別の原因として考えられるのは、HD 15115から10光年離れた恒星HIP 12545だ。2つの恒星はもともと同じ領域で誕生した可能性が高く、過去にはもっと接近していたのだろう。そうだとすれば、HIP 12545の重力にかき乱された円盤がだ円形になった可能性はありうる。

10年以上前に「がか座ベータ(β)」をとりまく円盤が見つかったときは、300以上の科学論文が発表された。Kalas氏は、HD 15115の研究も同じくらい研究者を刺激して、確認観測も相次ぐだろうと信じている。「この円盤は、新しくて挑戦的な課題を、理論家たちに数多く提供しているのです」