世界初、なゆた望遠鏡が恒星の二重円盤を発見

【2006年2月23日 アストロアーツ】3月22日更新

兵庫県立西はりま天文台の口径2メートルのなゆた望遠鏡(国内に設置された望遠鏡としては口径が最大で、公開望遠鏡としては世界最大)が、すばるの和名で有名なM45プレアデス星団に属する恒星プレイオネを観測した結果、星の周囲に、交差する2面の円盤を見出したと発表した。


プレイオネの想像図 プレアデス散開星団とプレイオネの位置

(上)プレイオネの想像図(坂元誠(西はりま天文台)作図)、(下)プレアデス星団とプレイオネの位置。クリックで拡大(提供:西はりま天文台)

星についての様々な情報は、星のスペクトル(虹)を詳しく分析することによって得ることができる。なゆた望遠鏡のナスミス焦点部には星の光をスペクトルにする可視光分光器という装置が取りつけられている。この装置を使った観測が2005年の秋からスタートし、プレイオネになゆた望遠鏡の観測の目が向けられた結果、この二重の円盤の発見となった。

プレイオネはM45プレアデス星団に属する星で、星団の中で7番目に明るい5等星だ。スペクトル型の分類ではB型に属し、表面温度は約1万2千度。地球からの距離は約400光年、年齢は1億歳程度、半径は太陽のおよそ4倍。

2005年12月になゆた望遠鏡が得たプレイオネのスペクトルを解析した結果、カルシウムの吸収線が深くなっていることが明らかとなった。(過去の観測からこれは新しく高温のガス円盤が形成されたことを示すものであることがわかっている。)美星天文台による2006年1月の観測でも同様の結果が得られ、これにより新しい円盤の形成が確定された。2004年12月時点で美星天文台のスペクトル観測では、円盤誕生の兆候はなかったため、新しい円盤は2005年春から秋頃に形成が始まったと推定されている。

プレイオネの古い円盤(想像図イラストの外側)については、1973年にカナダの研究グループがすでに発見していたが、今回の観測でその古い円盤も新しい円盤を囲むような形状で、今も存在していることが判明した。これはプレイオネの鉄の吸収線の形状を調べることによって明らかになったもの。プレイオネが属するB型星の約20%は高温ガス円盤を持ち、プレイオネは特にB型輝線星と呼ばれている。そのB型輝線星に二重の円盤が発見されたのは今回が初めてである上、驚くべきことに、新しい円盤と古い円盤は60°の角度で交差していたのだ。外側の古い円盤は幅がプレイオネ本体の2〜7倍、温度が8千〜1万度、内側の新しい円盤の幅は星の2倍で、温度は7千から8千度と考えられている。

プレイオネになぜ円盤が形成されるのか、詳しくことはわかっていない。プレイオネの表面が振動していて、それによって高められた波と高速自転との関係で、赤道部からガスが飛び出して円盤が形成されるという説が考えられている。また、プレイオネが連星系で、その伴星がすぐ近くまで接近しプレイオネ本体からガスを引きちぎったとする説もある。なゆた望遠鏡は、この謎を解明すべく引き続きプレイオネの観測を行っている。

注:このニュースは、兵庫県立西はりま天文台の鳴沢真也(なるさわしんや)さんからいただいた原稿を元に作成しました。

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