水星の太陽面通過 全国で観測 「ひので」も動画と画像を発表

【2006年11月9日 国立天文台 アストロ・トピックス(254)

11月9日の朝、水星が太陽の前面を横切る「太陽面通過」現象が起こりました(アストロ・トピックス 253参照)。北海道を除く全国で好天に恵まれ、水星が黒い点となって太陽の前面を動いていくようすを観察することができました。


(「ひので」SOTの画像)

「ひので」の可視光・磁場望遠鏡(SOT)でとらえた第2接触直後の様子。「ひので」のページでは動画も公開されている。クリックで拡大(提供:国立天文台)

(「ひので」XRTの画像)

「ひので」のX線望遠鏡(XRT)の画像。太陽面通過が始まる前から、水星が太陽のコロナを隠す様子が分かる。クリックで拡大(提供:国立天文台)

水星は太陽の南東側から太陽面上に入り込みます。水星が太陽面に接する「第1接触」が起こる時刻には、日本では太陽がまだ地平線上に上っていないため、通過の様子を観察することはできませんでしたが、その後、各地での日の出後に、水星が太陽面を通過しつつある状態から見え始め、太陽面から完全に出終わる「第4接触」(9時10分頃)まで観察できました。

この様子は、日本各地の公開天文施設の観察会などで一般の方々にも楽しんで頂けたようです。さらに、インターネットによる中継も国立天文台乗鞍コロナ観測所や岡山天体物理観測所などから行われました。

この水星の太陽面通過のようすは、2006年9月23日に打ち上げられ、先日ファーストライトを迎えたばかりの太陽観測衛星「ひので」(アストロ・トピックス 251参照)からも観測され、その動画映像と画像が公開されました。

公開された動画と画像は、可視光・磁場望遠鏡が観測した第2接触(完全に水星が太陽面に入り込んだ瞬間)直後のものです。水星が、画面左から右へ移動してきており、ちょうど水星全体が太陽面に入り、丸い水星の輪郭がはっきり見えています。この水星の位置は、高い精度で予測できるので、「ひので」衛星チームではこの輪郭を利用し、3つの望遠鏡が向いている方向をあわせる調整を行なう予定です。

可視光・磁場望遠鏡は高性能であるため、太陽中心とふちを観測するときではピント位置が変わります。現在、ピント位置の調整や各種フィルター調整の試験観測を行なっている最中で、まだ調整が完了していません。そのため、この画像は若干ピントがずれ気味で、可視光・磁場望遠鏡の最高性能を発揮した画像ではないことをお断りしておきます。

前回、水星の太陽面通過が起こったのは、3年前の2003年5月7日でした。

この先、2016年・2019年と水星の太陽面通過が起こりますが、どちらも日本では夜間のため、見ることができません。日本で次に水星の太陽面通過を見ることができるのは、26年後の2032年11月13日となります。このときには、第1接触・第2接触は観察が可能ですが、水星が太陽面上を通過している状態のまま日の入りとなります。

(注)「太陽面通過」は「日面経過」と呼ばれることもあります。どちらも同じ現象を指す言葉です。また、「第1接触」「第2接触」「第3接触」「第4接触」をそれぞれ「外触の始め」「内触の始め」「内触の終り」「外触の終り」と表現する場合があります。