騒ぐ子も静かな子も一緒に、星の保育園

【2006年8月24日 European Homepage for The NASA/ESA Hubble Space Telescope

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた大マゼラン雲の星形成領域の画像が、国際天文学連合総会で公表された。そこには、今まで明るい星の陰で目立たなかった、小さな星の赤ちゃんが寄り添っている様子が確認できる。


(HSTによる大ゼラン雲の星形成領域の画像) (大マゼラン雲の星形成領域LH95の拡大画像)

(上)HSTが撮影した大マゼラン雲の星形成領域LH95、(下)LH95のクローズアップ(左上:分子雲の密度の濃い部分、右上:生まれたばかりの低質量星がつくる星団、左下:LH95の主たる部分、右下:遠方銀河のうちの1つ)。クリックで拡大(提供:NASA/ESA)

大マゼラン雲は天の川銀河の伴銀河の1つであり、われわれから18万光年しか離れていない。しかし、水素よりも重い元素の存在割合が比較的少ないために、天の川銀河とは異なる環境下で誕生する星の様子を見ることができる。アソシエーション(解説参照)LH 95は、大マゼラン雲の中にある星形成の現場だ。

LH 95を構成する星々でとりわけ目立つのは、太陽の3倍以上の質量を持つ若くて重い星だ。LH 95を取り巻く淡い輝きは、DEM L 252と呼ばれる星雲の一部だが、星雲が輝くのも重い星からの紫外線を受けて周囲のガスが電離されるからである。実際には、アソシエーションで生まれている星は、さまざまな質量を持つ。しかし地上からは、重くてひじょうに明るい星しか観測できなかった。

そこでHSTの出番だ。重い星と共存する質量の小さな「赤ちゃん星」を数多くとらえ、その年齢や質量などを正確に求めることが可能になった。「HSTの鮮明な画像は、大マゼラン雲のアソシエーションに対する私たちの見方を劇的に変えてくれました」とマックス・プランク天文学研究所のDimitrios Gouliermis博士は語る。彼は、それらのデータを解析する研究チームのリーダーだ。

生まれたばかりでも、重い星は暴れん坊だ。紫外線で星雲を輝かせるだけでなく、強力な恒星風によって周囲の物質を吹き飛ばしてしまう。物質の密度が濃い部分は飛ばされずに残り、画像中で筋状に写っている。とりわけ青い光を吸収するため、赤みがかって見える。

一方で、ガスが収縮して星が誕生した領域もある。特に、小さくて暗い星は群れる傾向にある。画像中でいえば、左と中央にある2つの星団がこれにあたる。そこでは数百個もの赤ちゃん星がすやすやと眠っている。そうした控えめな星の中には、一緒に生まれた仲間でありながら激しい活動を続ける、明るい星のすぐとなりで輝くものもあるという。

アソシエーション

一般の星ぼしと比べて、相対的に空間密度が高い特定の種類の恒星集団のこと。星落(せいらく)とも呼ばれる。誕生から1000万年以下のたいへんに若い星の集りで、100〜1000光年の空間に数十〜数百個の集団をつくっている。(「最新デジタル宇宙大百科」より)

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