X線で初めて捉えられた、ミラと白色矮星の連星系の相互作用

【2005年5月13日 CHANDRA Press Room

X線観測衛星チャンドラ(CHANDRA)により、相互作用する連星のようすが捉えられた。これは、X線画像としては初めてのものだ。連星の片方は巨星でもう片方は白色矮星と考えられている。巨星からはX線アウトバーストが観測され、また巨星と白色矮星とをつなぐように物質が流れている証拠も見つかった。

(ミラのX線画像とその想像図)

(左)ミラのX線画像、(右)ミラの連星系の想像図。クリックで拡大(提供:X線画像: NASA/CXC/SAO/M. Karovska et al.、イラスト:CXC/M.Weiss)

観測された連星は、くじら座にある、われわれから約420光年離れたミラAB。ミラA(単に「ミラ」とも呼ばれる)は太陽の600倍の大きさにまで成長した巨星で、330日ほどで劇的に明るさを変える変光星として有名。一方、ミラBは白色矮星と思われる天体だ。二つの天体の距離は、ちょうど冥王星と太陽との距離の2倍にあたる約100億キロと推測されている。観測する前は、X線は白色矮星を取り巻く円盤からしか発生しないと考えられていたため、巨星からX線アウトバーストが検出されたことに専門家は驚いている。不安定なミラAの内部がかき回されることで、上層部の磁気も乱れ、X線アウトバーストが引き起こされたようだ。ミラAの不安定さはまた、表面のガスを吹き飛ばし強力な恒星風を生じさせ、その一部はミラBに取り込まれている。

また、X線と紫外線波長による観測から、二つの星の間を橋のように結ぶ物質の流れの存在も明らかになっている。これはミラBが恒星風を通してだけでなく、直接ミラAの物質を取り込んでいる証拠ではないかと考えられている。

ミラのように、普通の恒星と白色矮星(またはブラックホールか中性子星)からなり、相互作用している連星系は多い。通常このような天体間のガスの移動は、画像からは直接見られないので、チャンドラの高い分解能で実現した今回のミラの観測は、こういった連星に関する理解を深めるのに役立つと期待されている。