マイクロクエーサーのジェットが作る、宇宙に横たわる巨大らせん構造

【2004年11月8日 NRAO Press Release

アメリカ科学基金(National Science Foundation, NSF)のVLA(超大型電波干渉計)によって、SS 433というマイクロクエーサーの巨大なジェット構造が捉えられた。画像からは、まるでワインオープナーのらせんを思わせるような形が見える。

(VLAが捉えたSS 433の両極ジェットの画像)

VLAが捉えたSS 433の両極ジェット。クリックで拡大(提供:Blundell & Bowler, NRAO/AUI/NSF)

SS 433はブラックホール(または中性子星)と普通の星の連星系だ。わし座の方向にあり、地球からは約1万8000光年離れている。発見後間もない1970年代から80年始めにはメディアでよく取り上げられ、「世紀の謎」の異名を与えられていた。光速のおよそ4分の1のスピードで吹き出しているジェットは、円盤がふらついているため162日周期で回転しており、結果としてこのような珍しいらせん構造となっているのである。

観測によれば、ジェットの速度は光速の24パーセントから28パーセントの範囲で変化していることが明らかになった、また、両極のジェットが同じ速度で、同時にスピードを変化させていることも明らかになった。この変化は、伴星から降着円盤へと物質が降り積もる速さの変化によるものだと考えられている。

さらに、この天体までの距離が1万8千光年と正確に得られたことで、超新星爆発で吹き飛ばされたシェル構造の年齢をより正確に決定できるようになった。正確な距離がわかるとマイクロクエーサーの各部分の実際の明るさがわかるので、同天体の物理的なプロセスに関する情報も詳しくわかってくるだろう。

天の川銀河内にあるマイクロクエーサーのジェットは、銀河の中心で作られるようなジェットと同様の過程から生み出されると考えられている。そういった遠方銀河のジェットを研究するのは大変だが、近傍のマイクロクエーサーは近いだけでなく変化のスピードも速いため観測や研究がしやすい。われわれにとっては、さながら便利なジェット研究所といえる観測対象なのだ。