ホイップル博士の訃報

【2004年9月2日 国立天文台 アストロ・トピックス(45)

20世紀の偉大な天文学者の一人であるフレッド・ホイップル(Fred Whipple)博士が、8月30日に97歳の生涯を閉じました。

(ホイップル博士の写真)

ホイップル博士(提供:Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)

ホイップル博士は、1950年代に、彗星核が塵(ちり)の混じった氷からできているという『汚れた雪玉』モデルを発表し、彗星核の正体の議論に終止符を打ちました。1950年と1951年に、ホイップル博士が書いた雪玉モデルの論文は、雪玉の概念だけでなく、雪玉からの水の蒸発によって彗星核の軌道が変化する「非重力効果」の謎を解決し、当時知られていたエンケ彗星の軌道のずれを定量的に説明することに成功したのです。これらの論文は、2003年の天体物理学雑誌(Astrophysical Journal)の調査によると、50年間でもっとも引用された研究論文となりました。

その後も自ら観測を精力的に行い、6個の新彗星を発見し、その生涯を彗星や流星といった太陽系天体の研究に捧げました。1960年代には、スミソニアン天文台の観測所として、アリゾナ州のホプキンス山を選定し、複数の鏡を合成したマルチミラー望遠鏡の建設をアリゾナ大学と共にリードし、現在ではホイップル天文台(Fred Lawrence Whipple Observatory)と呼ばれています。

謹んでご冥福をお祈りします。

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