ハッブル宇宙望遠鏡が活躍、単独で存在する太陽以外の恒星の質量を初めて計測

【2004年7月23日 HubbleSite NewsCenter

単独の恒星について、太陽以外では初めて、質量の計測が行われた。これまで恒星の質量計測は連星系のものに限られていたが、今回の新しい方法はマイクロレンズ現象を起こしているレンズ源の恒星の質量を計測するというものだ。

(ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、マイクロレンズ現象を起こしているMACHO-LMC-5)

マイクロレンズ現象MACHO-LMC-5。左側の小さい画像は1993年、1994年当時のもの、右側の画像はハッブル宇宙望遠鏡の高感度カメラが2002年に捉えたもの。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and D. Bennett (University of Notre Dame))

新しい計測方法で質量が明らかにされた恒星は、われわれから1800光年離れたところにある小さな赤い星だ。この星は1993年にMACHO-LMC-5と呼ばれるマイクロレンズ現象を起こした天体だったのだが、マイクロレンズ現象で観測された光が明るさだけでなく色までも変化させたため、専門家の注目を集めたのである。

明るさだけでなく色の変化も観測できるということは、手前にあるレンズ源となった星と大マゼラン雲にある背景の星の2つそれぞれを独立した天体として観測できる可能性があるということだ。そこで、数年後にハッブル宇宙望遠鏡を使って高解像度の観測を行い、2つの星の姿を別々に捉えたのである。

2つの星を別々に観測すれば、それぞれの星までの距離が求められる(背景の星までの距離は大マゼラン雲までの距離とする)。この距離の情報とマイクロレンズ現象による明るさの変化の情報を使って、レンズ源となっている手前の星の質量が計算で求められたのだ。計算の結果によれば、太陽の10分の1程度の質量だということである。

星の質量を知ることは星の進化を知る上で重要だが、これまで専門家が行ってきた星の質量の計測は連星系を成しているものに限られていたため、新しい計測方法によって観測の対象が広がったことになる。今後、宇宙干渉法計画(Space Interferometry Mission)によって、より多くのマイクロレンズ現象が観測されると期待されている。そうすれば、今回の方法によって、さらに多くの恒星の質量が計算されるだろう。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>