宇宙で最小クラスの超低温星の質量が初めて直接量られた

【2004年6月29日 ESO Press Release

ヨーロッパ南天天文台のVLTやハワイにあるケック望遠鏡、そしてハッブル宇宙望遠鏡などによる4年間の観測から、矮星の連星系の質量が量られた。

(2MASSW J0746425+2000321連星の画像)

連星系2MASSW J0746425+2000321。異なる日時、光学系で7回撮影されている(提供:NASA,ESA and H. Bouy(MPE))

質量が明らかにされたのは、およそ40光年かなたにある連星系2MASSW J0746425+2000321の星々だ。連星の間隔は2.5天文単位(太陽と地球の平均距離の2.5倍)で、その周期は約10年である。大型望遠鏡などによる観測からこれらのデータを集め、それをもとに連星系の合計の質量が得られた。さらに、星々のスペクトルなどを調べ、それぞれの質量が決定されたのだ。

観測によって、連星の星々についてさまざまなことが明らかになった。連星系の星々は年齢が5〜10億歳、表面温度が摂氏1500度ほどという超定温星で、質量は太陽質量の8.5%と6%であると求められた。質量の大きいほうの星はL型矮星に属する天体だ。このクラスの天体は1997年に初めて発見されたばかりで、その質量は宇宙でも最小クラスに属する。理論上では、太陽質量の8%が星の中心で核融合を起こして恒星として輝くことができる最低質量とされているので、今回明らかにされたL型矮星の8.5%という質量は微妙なサイズといえる。また、もう一方の星は褐色矮星である。

小さく軽い矮星同士の連星ともなれば、両天体ともにあまりにかすかで、お互いの距離が近いため、観測は専門家の大きな挑戦であった。この連星が発見されたおかげでそれぞれの質量を直接求めることができたのは、低質量の恒星の進化や、惑星と恒星の中間的な存在の天体に関する研究において、ひじょうに重要な結果といえるだろう。