ジェミニ望遠鏡、非常に接近した連星系を分離して撮影

【2002年5月24日 Gemini Press Release

ハワイのマウナケア山にあるジェミニ北望遠鏡を使って連星の観測を行なっていた研究グループが、わずか3天文単位(1天文単位は地球と太陽の平均距離、約1億5000万km)しか離れていない連星を分離して撮影することに成功した。

(連星系 LHS2397aの画像)

ジェミニ望遠鏡が撮影した連星系 LHS2397a。解像度は0.1秒角。赤く写っているのが褐色矮星(提供:Gemini Observatory / Melanie Freed, Laird Close, Nick Siegler University of Arizona / Hokupa'a-QUIRC image, University of Hawaii, IfA)

この連星系の主星は LHS 2397aという名前の低質量の星で、地球からの距離がおよそ46光年とかなり近いところにある。そこから3天文単位離れたところを褐色矮星の伴星が回っているのだ。褐色矮星というのは中心で核融合反応を起こして輝き始めるのに必要な質量を持たない星で、よく「恒星になり損ねた星」などと形容されるが、それでも今回の褐色矮星の場合には木星の質量の38倍から70倍(地球の10,000倍から20,000倍)は重たい。太陽から木星までの距離が5天文単位なので、今回の連星系を太陽系に当てはめて考えると、「太陽の10%ほどの質量の」低質量星の周りを「木星よりも重たい」褐色矮星が「木星よりも近い」距離で回っているということである。

今回このように近接した連星を分離して撮影することができたのは、補償光学という技術によるところが大きい。観測にじゃまな大気のゆらぎを打ち消すことで非常に高分解能が得られるのだ。この技術は、すばる望遠鏡やケック望遠鏡など、世界中の大口径望遠鏡に採用されている。

研究グループは他に11個の低質量星の連星系を発見したが、主星と伴星(褐色矮星)の間隔は4天文単位ほどしか離れておらず、20天文単位よりも遠いところには見つからなかった。ハッブル宇宙望遠鏡を使った別のグループの観測でも同じような結果が得られている。主星の質量が伴星の質量や伴星までの距離にどのような影響を与えるのかという連星系の研究を進める上で、20天文単位より遠いところに褐色矮星が見つからないという今回の結果は重要な制限となるだろう。