冥王星による恒星食の観測から冥王星の大気を探る

【2002年9月2日 ESO Press Photos

太陽系第9惑星の冥王星には希薄な大気があることが知られているが、現在その大気を研究するための唯一の方法は冥王星による恒星食を観測することである。

(冥王星、衛星カロン、三重星の写真)

冥王星と衛星カロン、隠された三重星。(提供:ESO)

冥王星に大気が存在することがわかったのは1985年8月19日の恒星食の観測からである。恒星からの光が冥王星に隠される際、大気がなければ星の光は突然消えるように見えるが、大気が存在するために徐々に暗くなるように見えたのだ。大気を通して見える光の強さや色の変化を観測することで、主成分はおそらく窒素分子でわずかにメタンが含まれることがわかった。1988年7月9日の観測では、冥王星の大気が二層構造をしていて内側の層は逆転層(地表から離れるほど温度が高くなる層)かもしれないことがわかっている。

先ごろ、7月20日には、南アメリカで冥王星による三重星の恒星食が見られ、多くの観測が行なわれた。ESO(ヨーロッパ南天天文台)のラ・シラ観測所やパラナル観測所は食の見られる南限からさらに200kmほど南に位置していたため食そのものは観測できなかったが、冥王星とその衛星カロン、そして三重星を撮影している。カロン(直径約1200km)は、冥王星本体(直径約2300km)とくらべると衛星としては非常に大きいので、冥王星−カロンは「二重惑星系」と呼ばれることがある。今回の写真は「二重惑星系と三重星」の接近をとらえたものといえるだろう。

冥王星による恒星食は8月21日にもハワイ付近で観測された。今回の観測は、前回(1988年)の観測から大気の状態が変化していないかどうかを調べるという重要な目的もあり、詳しい解析が待たれている。なお、いまだ探査機が訪れたことのない唯一の惑星である冥王星だが、2006年ごろにはNASAが冥王星探査機を打ち上げる計画がある。

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