Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2023年7月号掲載
宇宙と人間と記録と想像と

人間は太古の昔から、自分たちの暮らしや気持ちを記録してきた。それは洞窟に残した手形や動物の姿だったり、石や紙にしるした絵や文字だったりした。その多くに太陽や月や星が登場し、明るさや動きについて書き留められているのは、それだけ宇宙が身近で関心が高かったのだろう。現代でも私たちは、空を見上げてつぶやいたり写真を発信したりする。

『ワンルームから宇宙をのぞく』はJAXA宇宙科学研究所研究員の著者が“日常の中の宇宙”や“宇宙の中の日常”について綴った宇宙工学エッセイ「フィボナッチ、鹿児島の夏」「ノンホロノミック、空を飛ぶ夢」など見出しから理系的表現がいっぱいで、新感覚でありながら天文好きとして共感するところも。東大発オンラインメディア『UmeeT』とWebマガジン『OHTABOOKSTAND』に連載した作品を一冊にまとめたもの。

一方、『天文学者は星を観ない』は韓国天文研究院で月探査プロジェクトに関わる女性科学者のエッセイ。研究生活の現場や働くママとしての思いを綴り、幅広い層から支持を得ている。「韓国の研究現場ってどんな様子?」という好奇心で読むもよし、「天文学者になりたい」という若者が将来の参考にするもよし。そして「天文学者って本当に星を観ないの!?」という最大の疑問をこの本で確認するもよし。

次の2冊は、歴史上の人物や出来事をあつかった本。『また会う日まで』は海軍軍人で天文学者でクリスチャンだった、著者の大伯父を主人公にした歴史小説。明治から戦後までの近代史と、3つの資質を持った人物の伝記を融合させた超大作だ。皆既日食観測のために訪れた島で聴く賛美歌「また会う日まで」、海軍水路部勤務で真珠湾の精密な潮汐表を求められて始まった戦争、信仰仲間の日野原重明医師と交わした立ち話、臨終の間際に聴く聖歌「主よ、みもとに」。700ページ超の小説は、まさにズシンと重く響く。朝日新聞に2020年から約1年半にわたり連載された小説の書籍化。

『歴史の中の天文 第二版』は、1995年に刊行された『宇宙からのメッセージ〜歴史のなかの天文こぼれ話〜』を改題修正し2017年に復刊した書籍の第二版。「卑弥呼の日食」「コロンブスの月食」「ゴッホの星空」など、“古天文学”を提唱した著者が歴史的事件と天文の関係を検証する内容は何度読んでも興味深い。

さて、最後の3冊は想像の世界、つまりフィクションだ。『満月珈琲店の星詠み〜メタモルフォーゼの調べ〜』は同シリーズの第4弾。北海道を舞台に、三毛猫のマスターが心温まるメニューと占星術で、訪問客に寄り添う。今回も美しいカラーイラストは健在で、ファンの期待を裏切らない。

現在テレビで放送中のアニメ『君は放課後インソムニア』は本誌特集「星地巡礼」(2023年5月号)などで何度か紹介してきたが、『セントエルモの光』も同じように高校天文部の活動を描いた青春小説だ。東京から田んぼの広がる土地に転校した女子高生「えるも」が天文部で過ごす物語。今回の「春と夏」編に続き、9月発刊予定の「秋と冬」編で完結する。イマドキの高校生らしい場面はいろいろあるが、人間関係の悩みや素直になれないところなど、いつの時代も変わらない。

『うそつき婚と星月夜』は、古い天文台を舞台にしたコミック。「契約結婚」という最近のドラマでありそうな設定から始まるストーリーだが、丁寧な取材による描写と心優しい登場人物たちによる展開は、素直な気持ちで読める。基本的にラブストーリーだからハッピーエンドで大満足だが、「こんな風に復活できる天文台は幸せだな。日本の各地にはきっと、静かに幕を閉じていく施設があるんだろうな」と思ってしまう。すべての天文台に明るい未来を願う。

(紹介:原智子)