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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

天文読書のすゝめ(星ナビ2010年3〜5月号掲載)

※書籍名、および表紙画像から、Amazon.co.jpの商品ページにリンクしています(一部商品をのぞく)。

2010年4月号

宇宙を識る 2

科学分野を中心に多くのタイトルを刊行しているサイエンス・アイ新書。その中で、宇宙・天文をテーマにしたものをピックアップ。
サイエンス・アイ新書は2006年10月に創刊され、この3年余りの間に、科学だけでなく情報通信、工学、生物、数学等に関連した150冊近いタイトルを刊行している。その中で、現在までに発売された宇宙・天文をテーマにした9冊を紹介しよう。

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宇宙の誕生から最近の観測成果まで、ひと通り網羅しているものが4冊。特に『宇宙はどこまで明らかになったのか』(福江純・粟野諭美 編著/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、宇宙・天文に関するすべての研究テーマが、それぞれ今何を見据えているかを具体的に解説していておすすめ。各分野の現状を把握するならば本書を読むのがもっとも効率的と言えるだろう。

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『科学理論ハンドブック50』(大宮信光/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、地学と生物学の観点が入っており総合的に「理科」を学ぶことができる1冊。『宇宙の新常識100』(荒舩良孝/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)では、100のQ&Aでもう半歩踏み込んだ宇宙論を展開。学生はもちろん、40代以上の「復帰組」の再入門書としても最適だ。

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『天体写真でひもとく宇宙のふしぎ』(渡部潤一/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、多数の天体写真とそこから見えてくる小さな発見と謎を紹介し、本を読み終えるころには宇宙全体への理解を身につけられるというお得な本。どこから開いても理解が進むので、つまみ読みから始めてみては。

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次は総論から各論へクローズアップを試みた3冊。読者減の危険をおかして数式の掲載に踏み切った『暗黒宇宙で銀河が生まれる』(谷口義明/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、そのチャレンジ精神ゆえにそれだけ深い宇宙へ我々をいざなってくれる。知っているようで知らないブラックホール。「エルゴ領域」や「ブラックホールシャドウ」という言葉に「?」しか浮かばないあなたは、『カラー図解でわかるブラックホール宇宙』(福江純/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)で再出発だ。『ここまでわかった新・太陽系』(井田茂・中本泰史/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、太陽系天体の研究と系外惑星の探索をリンクさせている点が新しい。

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『はじめる星座ウォッチング』(藤井旭/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、おなじみ、藤井旭氏による観察入門。持ち運び簡単な新書サイズは意外と重宝する。

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『NASAハンドブック』(大崎誠・田中拓也/ソフトバンク クリエイティブ/1,000円)は、膨大なコンテンツと英語の前に尻込みしてしまうNASAのサイトを最大限に活用する術を教えてくれる。「MyNASA」機能など、もっと早く知っておきたかった! と思う情報が満載だ。

宇宙へ飛ぶ

誰もが宇宙へ行ける時代の到来というが、実際のところどうなのだろう? 宇宙に焦がれる人々の本を読めば、自然と答えが導かれる。

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『宇宙暮らしのススメ』(野田篤司/絵:あさりよしとお/学習研究社/1,260円)は、宇宙船を航行させたり他の惑星に住むということがどんなものなのか、マンガを交えて具体的に解説している本だ。実現可能なプランを繰り出すことで、読者の気分はぐっと高まってくる。

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やる気が満タンになったら次に読みたいのは、今一番ホットな「宇宙への行き方」を扱った『宇宙旅行はエレベーターで』(ブラッドリー・C・エドワーズ、フィリップ・レーガン/関根光宏 訳/ランダムハウス講談社/1,890円)と、惑星重力の相互作用を利用してサーフィンのように宇宙空間を進むという、一見トンデモな方法で宇宙への道を提示する『私を月に連れてって』(エドワード・ベルブルーノ/北村陽子 訳/英知出版/2,100円)。あなたはどちらの方法で宇宙をめざす?

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『新企画は宇宙旅行!』(古田靖/TAC出版/1,365円)は、JTBの宇宙旅行事業推進室長となったサラリーマンの挑戦を追ったノンフィクション。ゼロから企画を立ち上げ、実現に向けて奔走する姿に「プロジェクトX」を見ているような高揚感を覚える。ビジネスマンでも天文学者でも、必要なのはこんなパワーなんだと思わせる。

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宇宙滞在といえば宇宙飛行士。まずは2009年に日本人初となるISSの長期滞在ミッションを成功させた、若田光一氏の記録『宇宙で過ごした137日』(若田光一・朝日新聞取材班/朝日新聞出版/1,365円)。長期ならではの過ごし方や工夫が興味深い。自分を運んできたシャトルが遠ざかる姿に感慨を覚えたという記述には、宇宙ステーションという閉じた環境の持つ特殊性を感じる。意外と「今日はお休み」が多いことも発見である。

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『ライディング・ロケット』(マイク・ミュレイン/金子浩 訳/化学同人/各1,890円)はアメリカ人宇宙飛行士のエッセイ。陸軍士官学校卒業で空軍を経て、宇宙飛行士になったという、古典的で典型的なアメリカ人の飛行半生が語られる。軍人らしい表現にはじめは抵抗を覚えるかもしれないが、読み進めれば彼の人格の奥深さを垣間見ることができるだろう。

宇宙を見る

星を見上げる喜びを閉じこめた写真集。宇宙旅行に思いをはせても、地球でしか見られない美しい風景があることを忘れずにいたい。

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写真集を2冊。オーロラを撮り続ける中垣哲也氏の『AURORA EARTH』(中垣哲也/オーロラダンス出版/2,500円)と、星景写真で高い評価を得ている武井伸吾氏の『星空を見上げて』(武井伸吾/ピエ・ブックス/2,520円)。どちらも、ひとつとして同じ星空はないことのすばらしさを実感させてくれる珠玉の写真ばかりだ。

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