合体銀河中の超巨大ブラックホールの活動性を赤外線で明らかに

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【2014年1月29日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡で赤外線観測した28個の合体銀河で、超巨大ブラックホールが大量の物質を飲み込んで活性化され、ブラックホール周辺のガスがひじょうに明るく輝いているようすがとらえられた。一方、合体銀河には複数の超巨大ブラックホールが存在すると考えられているにもかかわらず、2つ以上の活動的な超巨大ブラックホールが検出された割合は全体の約15%しかなかった。


すばる望遠鏡で撮影した合体中の大光度赤外線銀河の赤外線画像

すばる望遠鏡で撮影した合体中の大光度赤外線銀河の赤外線画像。クリックで拡大(提供:国立天文台、以下同)

活動的な超巨大ブラックホールの存在が複数認識された4個の合体銀河の赤外線画像

塵に埋もれた活動的な超巨大ブラックホールの存在が複数認識された4個の合体銀河の赤外線画像。波長2.2μm(Kバンド)と3.8μm(L バンド)との比較。クリックで拡大

現在の一般的な銀河形成理論では、ガスを豊富に持つ銀河同士が衝突・合体して大きな銀河へと成長してきたと考えられている。銀河合体中には、ガスが集められることで星生成活動が活発になる。また、元の銀河の中心に存在する太陽の100万倍以上の質量を持つ超巨大ブラックホールに物質が落ち込むことで、ブラックホール周囲の円盤状ガスがひじょうに高温になりとても明るく輝く「活動銀河中心核活動」が起こる。

これらの活動を観測的に理解することは銀河形成を解明する上で重要だが、大量の塵とガスに埋もれた場所で活動が生じると考えられており、可視光線ではよく見えないため、塵による吸収の影響を受けにくい赤外線での観測が必要とされている。

国立天文台ハワイ観測所の今西昌俊さんを中心とする研究チームは、塵に隠された活動性を示し赤外線で明るく輝く合体銀河「大光度赤外線銀河」を高解像度撮影することで、塵に埋もれた活動的な超巨大ブラックホールを精密に研究する手法を確立した。活動的な超巨大ブラックホールと星生成活動はどちらも塵を温めるが、エネルギーの変換効率が異なり赤外線での光り方が違うので区別できる。

すばる望遠鏡に搭載された近赤外線分光撮像装置「IRCS」と補償光学装置を用いて合体中の大光度赤外線銀河29個を観測し、2種類の赤外線波長の画像を比較したところ、28個の銀河において少なくとも1つの活動的な超巨大ブラックホールが存在することが確認できた。ガスを豊富に持つ合体銀河では超巨大ブラックホールに大量の物質が落ち込んで明るく輝き、活動銀河中心核活動として観測されやすいということを示している。

一方で、2つ以上の活動的な超巨大ブラックホールが見つかった天体は4個しかなかった。合体銀河中に存在するすべての超巨大ブラックホールに激しく物質が落ち込んでいる訳ではなく、その活動性に個性があると考えられる。超巨大ブラックホールへ物質が落ち込んでその周囲が明るく輝く現象は、銀河全体の性質ではなく、ごく周辺のガスの運動などによって決まっているようだ。

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