すばる望遠鏡、でこぼこな超新星爆発の形を明らかに

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【2012年8月6日 国立天文台

国立天文台などの研究チームが銀河系外にある超新星の偏光観測を行い、そのでこぼこな爆発構造を明らかにした。こうした構造が珍しいものではないこともわかり、今後同様の手法による観測で超新星爆発のメカニズムが解明されることが期待される。


超新星爆発の形ごとに予測される偏光の向きの様子

きれいな形状の爆発の場合(右)は向きの揃った偏光が、でこぼこした爆発の場合(左)は、波長によってばらばらな向きの偏光が予測される。クリックで拡大(提供:国立天文台)

大質量の恒星が一生の最期に起こす超新星爆発は、完全な球形ではないということがこれまでシミュレーションなどでわかっていたが、でこぼこが生じるメカニズムについては未だ解明されていない。国立天文台の田中雅臣助教らはこれを検証するため、すばる望遠鏡に搭載された「微光天体分光撮像装置」を用いて、実際の観測から超新星爆発がどのような形で起こっているのかを調べた。

遠方の超新星爆発の形状を実際に見るのは困難なため、超新星からの光の偏光が調べられた。「偏光」とは光の振動方向の偏りのことで、でこぼこした爆発からの光の場合には、波長ごとに偏光の向きがばらばらになる(画像)。

今回観測された2つの超新星爆発(2009年に出現したSN 2009jfおよびSN 2009mi)では、偏光の向きがばらばら、つまりでこぼこした爆発構造だった。同グループの以前の観測と合わせて6つの超新星爆発のデータが集まり、そのうち5天体にでこぼこ構造の特徴が見られた。つまり、この構造は稀なものではないということだ。

超新星爆発の3次元的形状の推定は、銀河系内の超新星残骸の観測からもこれまで数例行われてきた。だが、銀河系内では100年に1度程度しか超新星爆発が起こらないため、観測サンプル数が限られる。

今回示されたように銀河系外の超新星爆発の形状を偏光によってとらえることができれば、これから出現する多くの銀河系外超新星爆発にも応用でき、超新星爆発のメカニズムを解明するための糸口となることが期待される。