「ひので」が太陽極域磁場の反転をとらえた

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【2012年4月19日 国立天文台

最近少しずつ活動が活発化してきている太陽。衛星「ひので」が両極域の磁場を観測したところ、北極の磁場はほとんどゼロの状態に近づいていることが発見された。北極磁場は間もなくマイナスからプラスに転じると予想される一方、南極磁場は変化を見せておらずプラスのままであることもわかった。


太陽の極域磁場のようす

太陽の極域磁場のようす。オレンジはマイナス、水色はプラスの磁場を表す。北極ではマイナスからプラスへ反転しつつあるが、南極はプラスのままであることがわかる。クリックで拡大(提供:JAXA/国立天文台)

太陽は平均11年の周期で活動の極大と極小を繰り返している。現在は徐々に活動が上昇してきているところで、来年5月ごろに極大を迎えると予想されている。極大期には黒点数が最大になり、また太陽の南北両極の磁場がほぼ同時に反転する。たとえば1997年には北極がプラスの磁場、南極がマイナスであったが、2008年には反転して北極がマイナス、南極がプラスになった。これが現在まで続いており、来年5月ごろに反転するというわけだ。

太陽の極域磁場は太陽活動のもとである黒点の源になっていると考えられており、どのように変化するかを調べることは太陽活動を予測する上でひじょうに重要だ。この観測に強力な力を発揮しているのが日本の太陽観測衛星「ひので」で、高い分解能などを活かして数々の研究成果を挙げてきた。

「ひので」は今回、今年1月の時点で太陽北極の磁場がほぼゼロの状態になっているようすをとらえた。ここしばらく北極の磁場はマイナスであったが、これが(予想より1年も早いものの)ゼロに近づいたということは、やがてプラスに転じると予想される。一方、驚いたことに南極の磁場には反転の兆候がほとんど見られず、安定してプラスが維持されていることも観測された。

太陽の大局的磁場のようす

太陽の大局的磁場のようすと予想。2008年(左)は通常の双極子構造(図では2重極構造と表記)だったが、近い将来は四重極構造になるかもしれない。クリックで拡大(提供:JAXA/国立天文台)

太陽の磁場は通常、大局的に見ると双極子構造(たとえば南極がプラスで北極がマイナスの棒磁石のような構造)をしている。しかし今回の観測結果から考えると、近い将来の磁場は南北の両方がプラス極になる四重極構造になると予想される。「ひので」の観測データを元に数値計算を行い、太陽の磁場構造を把握する研究が続けられているところだ。

太陽の極小期が長く続いたことや今周期の太陽活動が前周期に比べ低調に推移していること、さらに太陽の大局的磁場が四重極構造になる兆候が見つかったことは、太陽の内部で磁場を生み出すダイナモ機構の状態に変動があることを示している。17世紀ごろには黒点が少なかったマウンダー極小期と呼ばれる時期があり、関連性は明らかではないものの地球は寒冷期にあった。当時の太陽も今回のような状況にあったのかもしれない。

「ひので」は今年10月に太陽北極域を集中観測し、今後の磁場の推移を明らかにする計画だ。「ひので」による研究の進展により、太陽のダイナモ機構に関する基礎研究、さらには太陽が地球環境へ与える影響の理解が進むと期待される。

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