ハッブル宇宙望遠鏡による遠方銀河の拡大図

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【2012年2月7日 HubbleSite

ハッブル宇宙望遠鏡が、重力レンズ効果によって明るくなったおよそ100億光年かなたの銀河を撮影した。鮮明な画像が得られたおかげで像がゆがむ前の状態を復元することができ、星形成を行っている場所は天の川銀河のどの星形成領域よりも明るいことがわかった。


ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団と重力レンズ効果によって像がゆがんだ銀河、およびその復元図

重力レンズ効果によって像がゆがんだ銀河(円で囲まれた部分)と重力源となった銀河団(中央)。四角く拡大されているのが、ゆがんだ像から復元された銀河の像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, J. Rigby (NASA Goddard Space Flight Center), K. Sharon (Kavli Institute for Cosmological Physics, University of Chicago), and M. Gladders and E. Wuyts (University of Chicago))

はるかかなたの天体からの光が手前にある大質量の天体の近くを通過するとき、重力によって光が曲げられ、本来よりも明るくなって私たちの目に届くことがある。この「重力レンズ効果」で天体が見える場合、その像はアインシュタイン・リングと呼ばれるリング状やアーク(弧)状に見える(画像の丸で囲まれた部分)。

アメリカ・シカゴ大学のMichael Gladders教授らのチームは50億光年先にあるRCS2 032727-132623という銀河団を重力源として拡大された100億光年先の銀河を、ハッブル宇宙望遠鏡の広域観測カメラ3(WFC3)を用いて撮影した。

この銀河は2006年にもヨーロッパ宇宙機関(ESA)の大型望遠鏡(VLT)によって撮影されており、通常の重力レンズ天体よりも3倍も明るいことが知られている。

今回、2009年に新調したWFC3でこの銀河の鮮明な姿を捉えることに成功した。非常に鮮明な画像であるために、重力レンズ効果によってゆがんだ像を元に戻すことができる(画像のボックスで囲まれた部分)。星形成をしている非常に明るい領域は、天の川銀河で見られるどの星形成領域よりも明るいことがわかった。

100億年前には、モンスター銀河に代表されるような、非常に星形成が活発な銀河が多く存在していたことが知られている。Gladders氏らの研究チームはスペクトル解析によって、この銀河が非常に多くの星を形成している原因を探る予定である。