アインシュタインの一般相対性理論を実証する証拠をまた1つ発見

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【2011年5月9日 NASA

NASAの重力観測衛星Gravity Probe Bによって、一般相対性理論で予想されている測地学的な効果と慣性系の引きずり効果の2つを正確に確認することに成功した。これによって一般相対性理論が正しいとする証拠がまた1つ増えたことになる。


(Gravity Probe Bのイメージ図)

Gravity Probe Bのイメージ図(提供:Stanford)

(Gravity Probe Bが測定したもののイメージ図)

Gravity Probe Bが測定したもののイメージ図。黄色い線が一般相対論の効果がなかったときに衛星が向いているはずの方向。赤い線が観測された衛星の方向(一般相対論の効果があったときに衛星が向いている)方向。クリックで拡大(提供:NASA/Stanford University)

アインシュタインが提唱した一般相対性理論は、太陽の重力によって光が曲げられる効果が1919年の皆既日食の際に見られたことで検証され、その後も時間と空間のゆがみについて正確な測定が続けられている。人工衛星による地球の正確な観測や宇宙の正確な観測を行う際には、一般相対性理論の効果を正しく織り込むことが必要で、例えばGPSや地球の周りを回る人工衛星なども一般相対性理論による効果を加えて初めて正確に運用できることが知られている。

今回、NASAの重力観測衛星Gravity Probe B(GP-B)が一般相対性理論における重要な2つの項の効果について正確に測定することに成功し、一般相対性理論の正しさを支持する結果となった。

GP-Bは、非常に正確なジャイロスコープ4台を用いてペガスス座IM星という恒星の位置を正確に測定した。一般相対性理論が予測している効果がない場合、ペガスス座IM星を一度狙えばジャイロスコープの修正によってずっと正確にペガスス座IM星を狙い続けることができるが、一般相対性理論に従えばごくわずかだが位置がずれると予想されている。

このずれは、地球の重力によって空間がゆがむ効果(geodetic effect)と、地球が回転していることによって地球の重力場に引きずられる効果(慣性系のひきずり効果/frame-dragging)の2つの合力となる。これらの効果によるずれは、前者が1年で0.0018度、後者が1年で0.000011度という非常にごくわずかなものであるが、見事に測定されたのである。

「この発見は理論物理学に長期的な影響を与えるでしょう。また、今後も一般相対性理論のより正確な検証が行われていくと思います」と、NASAの科学者Bill Danchi氏は語っている。