ケック望遠鏡やジェミニ望遠鏡なども確認、木星の南赤道縞復活の前兆

【2010年11月29日 JPL

NASAの赤外線望遠鏡やケック望遠鏡、ジェミニ望遠鏡が木星を観測し、今年5月から消失していた木星の南赤道縞の復活の兆しを確認した。


(ジェミニ北望遠鏡がとらえた木星の画像)

ジェミニ北望遠鏡がとらえた木星。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/UH/NIRI/Gemini/UC Berkeley)

(ケック望遠鏡がとらえた木星の白斑の画像)

ケック望遠鏡がとらえた木星の白斑。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/W. M. Keck Observatory/UC Berkeley)

(NASAの赤外線望遠鏡がとらえた木星の画像、および(左下)白斑周辺領域の拡大画像)

NASAの赤外線望遠鏡がとらえた木星、および(左下)白斑周辺領域の拡大画像(緑色の領域2つのうち、右上が最初に巻き上げられたもの、左下が次に巻き上がってきたもの)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/IRTF/UC Berkeley)

今月9日にフィリピンのアマチュア天文家Christopher Go氏が木星の南赤道縞の復活の兆しとなる白斑を観測したことはすでにお伝えしたとおりだが(参照:「木星の南赤道縞に復活の兆し」)、ハワイにあるNASAの赤外線望遠鏡やケック望遠鏡、ジェミニ望遠鏡が確認観測を行った。その結果から、これまで消失していた縞が復活することはほぼ間違いないとみられている。

ジェミニ北望遠鏡が今月18日にとらえた画像(1枚目)には、これまで消えていた縞が再び現れているようすが見えている。また、ケック望遠鏡による11月11日の観測で得られた画像(2枚目)には、見慣れない白斑が南赤道縞の位置にはっきりと見えている。さらに、NASAの赤外線望遠鏡が11月16日にとらえた画像(3枚目)では、高い高度にまで巻き上げられた粒子が緑色の擬似カラーで示されている。

NASAのジェット推進研究所のGlenn Orton氏は縞の消失メカニズムについて次のように話している。「木星の縞がなくなったように見えた理由は、周囲を取り巻く白い帯状の雲の中に縞が隠れてしまったからです。それは、通常吹いている乾いた下降流が止んだからです。わたしたちは、赤外線の波長で、明るい白斑の西側に暗い物質が現れるのを待っていました。なぜなら、白斑の出現こそ白い雲の晴れ上がりの始まりだからです」と話している。

白い雲の層は、アンモニアの氷で構成されている。より高い高度に白い雲があると、それより低い高度にある茶色い物質は隠れてしまう。数十年に一度くらいの頻度で、木星の南赤道縞は1年から3年ほどの間完全に真っ白となり、研究者を長年悩ませた。この極端な変化は南赤道縞だけに見られるもので、もちろん太陽系内では木星特有のものである。また、木星ではこれと同時に大赤斑の色が赤暗く変化した。今後その色は、南赤道縞の復活とともに、再び少し明るくなると見られている。

なお、今回の現象では、アマチュア天文家と研究者の緊密な連携が見られた。よい機材を持つアマチュア天文家が世界中にいて、惑星の急な変化を即座に追いかけることができる。木星の変化を追い研究を続ける研究者にとって、そんなアマチュア天文家は重要な存在なのだ。

南赤道縞復活の兆しを最初にとらえたGo氏は「現象をとらえることができて幸運でした。まさに発生中というちょうど良いタイミングで現象に遭遇できるとは、夢にも思いませんでした」と話している。