土星の環を波立たせる衛星

【2009年7月1日 CICLOPS

NASAの土星探査機カッシーニがとらえた土星の環の画像に、波のような構造が見つかった。太陽光が土星の真横から当たる15年に1度の機会がもたらした発見だ。


(衛星ダフニスの影響でつくられた構造の画像)

衛星ダフニスの影響でつくられた構造。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

2009年8月11日は、土星の「春分」にあたる。土星は30年かけて太陽を1周するが、過去15年間、太陽からの光は土星の南極側に当たっていた。「春分」以降は北極側が照らされる。そして「春分」前後には光が赤道に対して、そして環に対してもまっすぐ射し込む。

地球上のわれわれは太陽光とほぼ同じ角度で土星を見ているので、現在、土星の環はひじょうに細くて見づらい。しかし、土星周回軌道にあるNASAの探査機カッシーニからは、超低角度の光に照らされた環を観察するチャンスだ。円盤のように薄くて平らな環に少しでも出っ張りがあれば、長く伸びた影から見つけることができる。

カッシーニは、直径8kmの衛星「ダフニス」の周囲で環が波のように盛り上がっているのをとらえた。ダフニスの軌道は環に対して傾いているため、環を構成する物質が重力に引っ張られたのだ。ダフニスの周辺では環を構成する物質が散乱されるため、幅42kmの「キーラーの間隙」が存在する。土星の環には同じような間隙が無数に見つかっていて中に衛星が潜んでいると考えられている。

周囲の環は厚みが10m程度なのに対して、カッシーニがとらえた構造は最高1.5km。衛星が環におよぼす影響がかなり大きいことが確かめられた。

カッシーニ画像解析チームのリーダーCarolyn Porco氏は「カッシーニが土星周回軌道に入ってから悩まされ続けてきた疑問の1つが、『どうしてすべての間隙の中から衛星が見つからないんだ』というものでした。今では、実際に衛星は存在するのだろうと考えています。予想よりはるかに小さかっただけです」とコメントしている。