惑星のあけぼの、セレスとベスタをクローズアップ

【2007年6月22日 Hubblesite Newscenter

セレスとベスタは、冥王星同様、かつて「惑星」と呼ばれた天体だ。今はどちらも「惑星」に分類されなくなったが、観測することの意義は大きい。セレスとベスタを訪れるNASAの探査機「ドーン」も打ち上げ間近で、下調べのためにNASAのハッブル宇宙望遠鏡HSTが撮影した画像が公開された。


(セレスの画像)

セレス。2003年12月から2004年1月にかけて撮影された可視光および紫外線のデータをもとに作られた画像。セレスの表面には薄い大気や水の氷もあるのではないか、と言われている(提供:NASA, ESA, and J. Parker (Southwest Research Institute))

(ベスタの画像)

ベスタ。2007年5月14日から16日にかけて、5.34時間周期で自転するのにあわせて、さまざまな角度から撮影された。激しい衝突の跡を残すベスタは、惑星の成長を考察する上で外せない天体だ。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and L. McFadden (University of Maryland))

(ドーンの想像図)

小惑星帯の中を飛ぶ探査機ドーンの想像図(提供:William K. Hartmann Courtesy of UCLA)

長い間9個とされた惑星の数は、今日では8個。冥王星は「元」惑星としてすっかり有名になってしまった。だが、これは天文学の歴史において例外的なできごとではない。かつて惑星が11個とされ、のちに4個が外されたことをご存じだろうか。

セレスは1801年、ベスタは1807年に発見された天体で、どちらも火星と木星の中間に位置し、太陽の周りを回っている。前後して見つかったパラス、ジュノーとともに、多数の天文学者から「惑星」と呼ばれていた。当時海王星と冥王星は見つかっていなかったので、惑星の数は11個ということになる。

一方で異論もあった。とくに、1781年に天王星を発見したハーシェルは、セレスなど4つの天体が暗くて小さすぎることを指摘している。彼は当時世界最大の望遠鏡を使っていたが、円盤状に見えるほかの惑星と違い、4つの天体はどんなに拡大しても恒星と区別できなかったのだ。英語で「小惑星」を意味する「Asteroid(恒星のような)」はハーシェルの造語である。

やがて、火星と木星の間には次々と新天体が見つかり、1850年を過ぎたころに、ようやくそこにあるのが「複数の惑星」ではなくて「小惑星が集まった小惑星帯」という領域なのだ、という認識が一般的になった。この点は、海王星軌道の外側に無数の「太陽系外縁天体」が存在し、冥王星もその1つだと受け入れられるまでの過程に似ている。外縁天体の重要性は近年強く認識されていて、今まさに冥王星などを観測する探査機「ニューホライズンズ」が向かっているところだ。小惑星帯の方も、決して軽んじられたことはない。

かつては、火星と木星の間にあった惑星が壊れて小惑星帯を作った、という説もあったが、重力による衝突合体が途中で止まって小さな天体が残された、というのが正しいようだ。地球などの惑星が成長しつつある姿が、太陽系誕生から46億年間保存されているとも言える。そこで、太陽系や惑星の起源を探るために、数々の研究が行われてきた。

NASAが7月7日に打ち上げる予定の探査機「ドーン」は、その中でも最大級のプロジェクトだ。惑星のあけぼの(Dawn)に迫るために、セレスとベスタを訪れ、それぞれを周回して観測する。

セレスは直径約950キロメートルと、小惑星帯の中では群を抜いて大きい。自分の重力で形が丸くなるほど大きいので、国際天文学連合によって冥王星とともに「準惑星」に分類された。ドーンがセレスに到着するのは2015年の予定。

ベスタは直径約530キロメートルで、ややいびつな形をしている。南半球には直径456キロメートルというベスタ自身に匹敵するサイズのクレーターが存在する。セレスに先立つ2011年に、ドーンはベスタ周回軌道に入る。

HSTの撮影データは、ドーンの飛行計画にも使われる。ハーシェルの時代とは違い、現代の最先端を行く宇宙望遠鏡はセレスもベスタも大きさのある天体として写していて、表面の模様も判別できるほどだ。模様は小天体の衝突が作りだしたクレーターや、表面成分の違いを反映していて、ドーンが到達した暁には詳細に調べられることになるだろう。

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